ひと目でわかる仕組み
- 目的の確認と参加者の準備
- マッピング素材の準備
- ベースマップの作成
- テーマ別レイヤーの追加
- 対話と検証
- 記録と写真撮影
- 分析と報告への統合
使う場面
- コミュニティの資源・サービスの分布・アクセス状況を住民の視点で把握したい
- 事業の対象地域の課題・強みを当事者と共に可視化したい
- 事業実施前後でコミュニティの変化を比較する基線データを作りたい
- 外来者が知り得ない地域の暗黙知・生活の空間的文脈を引き出したい
向かない場面
- 精密な地理情報(GPS座標・正確な距離)が必要な場合 — GISや実測地図が適切
- 匿名性が最優先の調査テーマ(センシティブな問題の空間的分布等)— マッピングは協働作業でありプライバシー確保が難しい
- コミュニティ内の合意形成よりも個別の詳細情報の収集が優先の場面
参加者・体制と成果物
ファシリテーターと地域の状況を異なる立場から知る参加者。発言のしやすさに応じてグループを分け、地図に含まれていない視点を確認する。
主な成果物
- 参加者作成マップ(写真記録)
- 対話内容のフィールドノート
- マップ分析・解説レポート
実施手順
- 目的の確認と参加者の準備「何を・なぜマッピングするか」をファシリテーターと参加者で共有する。地理的・社会的範囲(どこまでの地域か)と、マップに描く要素(建物・道路・水源・社会サービス・危険地帯など)を合意する。
- マッピング素材の準備大判の紙(A1〜模造紙)または地面に描く素材(石・葉・砂など)を用意する。カラーマーカー・シール・付箋を用意し、凡例を参加者と共に決める。スマートフォンのGPSアプリ・OpenStreetMapとの組み合わせも可能。
- ベースマップの作成参加者が地域の主要な目印(道路・川・主要建物)から描き始め、徐々に詳細を加える。ファシリテーターは「ここはどうなっていますか?」「他に大切な場所はありますか?」と問いかけ、地図を豊かにする。
- テーマ別レイヤーの追加評価目的に応じたテーマ(サービスの分布・危険地帯・変化した場所)を色や記号で追加する。トランセクトウォークを実施する場合は、地図の上に歩行ルートを描き、ウォーク中の発見をメモする。
- 対話と検証完成したマップを囲んで参加者が説明し、議論する。「この資源は誰がアクセスできますか?」「以前と変わった場所はどこですか?」など、評価クエスチョンに関連する問いを投げかけ、マップ上の情報を深掘りする。
- 記録と写真撮影マップを写真撮影して保存する。重要な対話の内容(参加者の発言・議論の要点)をフィールドノートに記録する。マップの「空白」(描かれなかった場所・話されなかった要素)も気づきとして記録する。
- 分析と報告への統合マップ上の情報を他のデータ源(インタビュー・文書)と照合して解釈する。事前後の比較マップを作成した場合は、変化した要素とその背景を分析する。報告書には地図の写真と参加者の説明の要点を組み合わせて提示する。
長所と限界
長所
- 外部者が知り得ない地域の空間的知識・生活の実態を当事者から直接引き出せる
- 作成プロセスが対話・関係構築・共同学習の機会になる
- 文字を読めない参加者も参加しやすく、インクルーシブなデータ収集が可能
- 低コスト・短時間で視覚的に説得力のあるデータが得られる
限界
- マップは参加者の知識・優先事項を反映したものであり、客観的な「正確な地図」ではない
- 参加者の構成(権力のある人が場を支配する等)がマップの内容に影響する
- 物理的な空間情報の精度は低く、GIS等の正確なデータとは組み合わせにくい
- 小グループ・ワークショップ形式のため、大人数の意見を代表しない
⚠ よくある落とし穴
- 外部者が描く場所や意味を決めてしまい、参加者が「修正するだけ」になる — 白紙か修正可能なベース地図かを参加者が選び、描く場所・凡例・意味を参加者自身が決定・修正できるようにする
- マップ作成に集中しすぎて、対話と記録が疎かになる — マップは対話を引き出すツール。発言・議論の記録が本質的なデータ
- 女性・若者・マイノリティが発言できない雰囲気のまま進める — グループ構成を事前に検討し、必要に応じてサブグループに分けて実施する
適用条件と根拠
- 資源の位置だけでなく、誰がなぜアクセスできるかを対話で確かめます。 [1]
子育て相談へ通える経路を描く
説明用の仮想例です。A地区の保護者が、相談施設とそこへ行く道を描く仮想例です。
| 描いたもの | 仮想的な説明 | 次の確認 |
|---|---|---|
| 駅から施設までの道 | ベビーカーでは階段を避けて遠回りする | 迂回路の実歩行時間 |
| 公園の掲示板 | ここで相談会を知った | 掲示に届かない人への案内手段 |
この例から判断できること
施設が近くても通いやすいとは限りません。距離と、坂・階段・交通手段などの条件を分けて確認します。
判断で間違えやすいこと
専門家が描いた地図に同意だけを求める
見直し方: 凡例と載せる場所を参加者が加除できるようにする
理由: 生活者が重視する情報を取りこぼさないためです。
住宅や相談歴をそのまま公開する
見直し方: 個人の場所は載せず集約した地域情報を共有する
理由: 地図は個人や家族の事情を推測しやすいためです。
参照資料と確認箇所
- C4D: Collect and/or retrieve data (methods)BetterEvaluation
- 参照箇所
- Social mapping
- 本文との対応
- 資源の位置だけでなく、誰がなぜアクセスできるかを対話で確かめます。
このページの引用情報
評価コンパス編集.「コミュニティマッピング」. 評価コンパス, 2026-10-07更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/community-mapping/
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更新履歴
- — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。
- — 内容確認 FW-06, FW-10 に基づき、断定・固定条件または記入シートと例の不整合を最小修正。入力欄の数・順序・ラベル・セクション構造を維持。未確認資料の確認状態は変更していない。

