ひと目でわかる仕組み
- 目的とグループ構成の設計
- ディスカッションガイドの作成
- 参加者の募集とロジスティクス
- セッションの実施:オープニング
- セッションの実施:進行と制御
- 記録と逐語録の作成
- グループ間比較分析
使う場面
- ある話題についてのグループ内の多様な意見・共通認識・対立軸を探りたい
- プログラムの受益者・利害関係者が事業についてどう認識しているかを把握したい
- 個人インタビューでは話しにくいトピックをグループの雰囲気で引き出したい
- 評価デザインの前段階として、重要な評価クエスチョンや指標候補を発掘したい
向かない場面
- 参加者間に強い権力差・利益相反がある場合(上司と部下の混在など)— 自由な発言が阻害される
- センシティブすぎる個人の経験(虐待・重大疾病等)を詳細に聞く必要がある場合 — 個別インタビューが適切
- 量的な傾向の把握が主目的の場合 — グループは代表性を持たない
参加者・体制と成果物
対話を促進できるモデレーターと記録担当。参加人数・グループ数は議論の深さ、立場の違い、参加しやすさを踏まえて設定する。
主な成果物
- FGD逐語録(グループ別)
- 観察メモ・フィールドノート
- テーマ分析レポート(グループ間比較を含む)
実施手順
- 目的とグループ構成の設計話し合うテーマと参加者の選び方を目的に合わせて決める。立場の違いが発言を妨げる場合はグループを分ける。人数やグループ数は対話のしやすさと含める視点から調整する。
- ディスカッションガイドの作成導入、中心となる問い、まとめの順にガイドを組み立てる。参加者同士の反応を促す問いと、異なる意見を安全に述べられる促進方法を準備する。
- 参加者の募集とロジスティクス参加者に事前に目的・所要時間・記録方法を説明し、書面同意を取得する。会場はリラックスした円形配置が理想。録音・録画機器の設置確認と、サブモデレーター(記録担当)を配置する。
- セッションの実施:オープニンググラウンドルール(発言の秘密保持・一人ひとりの意見尊重・批判より対話)を冒頭で全員と確認する。参加者が緊張を解くアイスブレイク活動を行い、全員が最初の発言をできる状態をつくる。
- セッションの実施:進行と制御発言が特定の人に偏らないよう、モデレーターは静かな参加者に質問を向け(「〇〇さんはどうですか」)、支配的な発言者には「他の方のご意見も聞かせてください」と穏やかに制御する。対立意見は排除せず「その違いについてもう少し話しましょう」と深める。
- 記録と逐語録の作成サブモデレーターが発言の流れ・グループ内の合意・対立・非言語情報(笑い・沈黙・感情的な反応)をリアルタイムで記録する。終了後早めに観察メモを補完し、録音の逐語録は分析計画に合わせて定めた期限で作成を始める。誰の発言かを記録するため仮名コードを割り当てる。
- グループ間比較分析複数グループの逐語録をテーマ分析で横断的に分析し、グループ間の共通点・差異を特定する。グループ内の合意形成プロセスや少数意見も記録し、単純な多数決的まとめにならないよう留意する。
長所と限界
長所
- グループ内の対話が連鎖的に発展し、個別調査では得られない深みのあるデータが生まれる
- 集合的な認識・文化的規範・共有された経験を明らかにできる
- 同数の参加者への個別インタビューより時間・コストが効率的
- プログラムへの参加者の反応を直接観察できる
限界
- 支配的な発言者・グループ思考(Groupthink)によって意見が均質化されるリスクがある
- センシティブなトピックでは自己開示が抑制される
- 結果はグループの文脈依存であり、他集団への一般化には慎重な解釈が必要
- 熟練したモデレーターがいないと対話が表面的になる
⚠ よくある落とし穴
- 「多数派意見=真実」と解釈する誤り — FGDはグループ内の合意形成プロセスそのものがデータ。少数意見の記録を怠らない
- 参加者の権力差を見落とす — 上司と部下、専門家と当事者の混在は自由な対話を阻害する。グループ構成を事前に精査する
- モデレーターが自分の仮説を確認する方向に誘導する — ガイドをレビューし、中立的な問い方を徹底する
適用条件と根拠
相談窓口の受付方法を話し合う
説明用の仮想例です。窓口を使った6人が、予約と当日受付について対話する想定です。
| 話題 | 仮想的な発言の違い | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 予約 | 予定が立てやすい/仕事の予定が変わる | 予約枠と当日枠を併用する必要性 |
| オンライン申込 | 便利/入力を途中でやめた | 入力を中断した具体的な箇所 |
この例から判断できること
6人の多数決で窓口全体の希望割合は求めません。意見の違いから、試行する受付案と追加で聞く人を決めます。
判断で間違えやすいこと
発言数が多い人の意見を集団の結論にする
見直し方: 一人ずつ話す機会と個別補足の手段を設ける
理由: 発言力と利用者全体の重要度は一致しないためです。
参加者間にも完全な守秘を約束する
見直し方: 持ち帰らないルールを共有し、保証できる範囲を説明する
理由: 他参加者の場外の行動までは管理できないためです。
参照資料と確認箇所
- Focus groupsBetterEvaluation
- 参照箇所
- Advice for using this method
- 本文との対応
- 参加者構成と進行によって得られる発言が変わるため、グループの反応を含めて記録します。
- Data Collection Methods for Program Evaluation: Focus Groups, Evaluation Briefs No.13Centers for Disease Control and Prevention · 2018
- 参照箇所
- p.2 How do you conduct a focus group?; Disadvantages
- 本文との対応
- 観察メモと録音からの逐語録を区別し、分析時間を事前に計画します。逐語録の24時間着手を共通要件としては示しません。
このページの引用情報
評価コンパス編集.「フォーカス・グループ・ディスカッション」. 評価コンパス, 2026-10-07更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/focus-group/
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更新履歴
- — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。 入力欄の位置・型・個数を保ち、フォームの固定条件や閾値の表記を修正。
- — 限定追調査FW-U01〜U05に基づき、分析方式・記録期限・人数の適用範囲と、回答率チェックの前提を明確化。既存入力欄は維持し、数値目安自体を誤りと断定していない。

