因果推論・実験因果推論時系列政策評価集計データセグメント回帰

中断時系列分析

Interrupted Time Series Analysis
別名: ITS、時系列介入分析、Segmented Regression Analysis

介入前後の連続した時系列を使い、結果の水準や傾きの変化を推定する方法です。季節性、自己相関、同時に起きた変化を考慮します。 [1]

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難易度 中級 費用 中 期間 作業計画の参考例(共通の標準時間ではありません):データ収集に1〜4週間、分析に1〜2週間

ひと目でわかる仕組み

成果時間 →介入反事実トレンド水準・傾きの変化
介入前後の時系列の水準・傾きの変化を見る概念図。同時期の別施策、季節性、自己相関などを検討し、折れ曲がりだけで介入効果と断定しない。

介入時点を明確にし、即時の水準変化か、徐々に起きる傾きの変化かを事前に仮定します。介入前の傾向を外挿した反事実と、介入後の推移を比較します。 [1]

単なる前後二時点比較ではありません。データの頻度と期間、欠測、季節性、誤差の依存を点検し、可能なら適切な比較系列を併用します。 [1]

使う場面

  • 行政記録・疾患発生統計・犯罪統計など月次・年次の集計時系列データが存在し、法律改正・政策導入・プログラム開始の前後を比較したい
  • 全国または地域全体に一律に適用された政策で、対照群を設定しにくいが時系列データが長期にわたって入手できる
  • 医療・公衆衛生分野で、新薬承認・感染症対策・スクリーニングプログラム導入の効果を集計データで検証したい
  • 介入前後のトレンドと季節性を、目的に必要な精度で検討できる時系列がある場面

向かない場面

  • 時系列が短すぎる、測定定義が変わるなど、反事実トレンドを推定する根拠が乏しい場合
  • 介入の時点で、政策以外の大きな外部ショック(他の政策変更・経済危機等)が同時に発生しており、両者の効果を分離できない場合
  • 集計データしかないのに個人ごとの変化や効果の分布を知りたい場合

参加者・体制と成果物

統計解析ソフト(R等)を扱える評価者・統計専門家1〜2名。行政統計担当者との連携でデータを確保

主な成果物

  • 時系列プロット(観測値・フィット線・反事実線)
  • セグメント回帰の係数表(水準変化・傾き変化の推定値と信頼区間)
  • 自己相関診断の結果(ACFプロット・DW統計量)
  • 比較群との比較結果(比較群つきITSの場合)

実施手順

  1. 結果変数と時系列データの確認
    測定する結果変数(例:月別救急搬送数・月次犯罪件数)とデータの時間単位(月次・四半期・年次)を決め、介入時点の前後を含む時系列データを収集・整理する。欠損・異常値を確認する。
  2. 介入時点の特定と時間変数のコーディング
    介入が実施された正確な時点(T)を特定する。分析用に「時間(t)」「介入ダミー(D=0介入前/1介入後)」「介入後経過時間(t*)」の3変数をコーディングする。
  3. 自己相関の確認
    残差の自己相関、季節性、過分散などを点検し、成果の分布と系列の構造に合うモデルや不確実性推定を選ぶ。
  4. セグメント回帰の実施
    結果変数を「介入前の水準(切片)・介入前の傾き・介入後の水準変化・介入後の傾きの変化」を推定するセグメント回帰モデルで分析する。各係数の実質的意味を解釈する。
  5. 結果の可視化
    観測値、推定した介入後の線、介入前モデルを延長した反事実の線と不確実性を示す。線の差はモデルに基づく推定で、折れ曲がり自体を因果効果の証明にしない。
  6. 比較群での検証と感度分析
    比較系列があれば、その選定根拠と共通ショックを検討して比較群付き設計を考える。季節性、介入の立ち上がりや遅延、分析期間を変えた場合の結果を調べる。

長所と限界

長所

  • 介入時点が明確な時系列を用いて、前後の水準と傾向の変化を分析できる
  • 即時の水準変化と傾きの変化を分けて推定し、想定する効果の現れ方を検討できる
  • 全体への適用政策や集計データのみが入手可能な文脈(公衆衛生・都市政策等)に適している
  • 妥当な比較系列があれば、共通する外部変化による説明を検討しやすくなる

限界

  • 介入前のトレンドが介入後も続いていたはず、という反事実仮定は介入前データが短いほど不確か
  • 介入と同時に発生した他の外部ショックがあれば効果を分離できない(内的妥当性の主要な脅威)
  • 集計系列から個人レベルの因果効果へそのまま読み替えることはできない。集団別の分析には対応するデータと設計が必要。
  • 時系列の自己相関を適切に処理しないと標準誤差が過小推定され、誤った有意差判定につながる

⚠ よくある落とし穴

  • 時点数だけを合否基準にする。必要な長さは変動、季節性、自己相関、効果の形と必要精度に依存する。
  • 自己相関や成果の分布を無視すると不確実性推定が不適切になる。残差診断と適切なモデルを用いる。
  • 季節性と介入の変化を混同する。観測間隔と季節周期を踏まえ、分析期間と季節性の扱いを説明する。
  • 同時の政策変更の見落とし——介入と同時期に実施された他の政策変更(同じ日に他の規制が変わったなど)を確認しないと、帰属の誤りが生じる

適用条件と根拠

  • 介入の影響の形を事前に設定し、自己相関・季節性・時間変化する交絡を検討します。 [1]
仮想例・実績ではありません

予約制度導入後の待ち時間を追う

説明用の仮想例です。仮想モデルで導入前の待ち時間を100−t分、t=12で導入し即時変化−8分、以後の傾きの追加変化を−0.5分/月とします。

月t介入なしの推定介入ありの推定差
1288分80分−8分
1486分77分−9分

この例から判断できること

t=14の差は−8−0.5×2=−9分です。この係数は説明用で実データの推定ではありません。同時期の人員増などがあれば、制度単独の効果は区別できない可能性があります。

判断で間違えやすいこと

導入直前月と直後月だけを比較する

見直し方: 十分な前後の系列で傾向と季節性を検討する

理由: 一時的な変動を介入効果と誤認しやすいためです。

時点を増やせば同時政策の問題も解決するとする

見直し方: 同時変化を記録し、比較系列や追加証拠を検討する

理由: 同じ時点の別要因は時点数だけでは分離できないためです。

参照資料と確認箇所

  1. Interrupted time series regression for the evaluation of public health interventions: a tutorial
    James Lopez Bernal・Steven Cummins・Antonio Gasparrini · 2017
    参照箇所
    The interrupted time series design / Step 4: regression analysis
    本文との対応
    介入の影響の形を事前に設定し、自己相関・季節性・時間変化する交絡を検討します。
    資料確認日: (AI照合を含む)

このページの引用情報

評価コンパス編集.「中断時系列分析」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/its/
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更新履歴
  • — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。 入力欄の位置・型・個数を保ち、フォームの固定条件や閾値の表記を修正。