ひと目でわかる仕組み
使う場面
- RCTや計量経済学的手法を適用できないが、プログラムが成果に貢献したかという因果的問いに答える必要がある
- 複雑な社会プログラム・開発支援・複数年にわたる政策で、変化のメカニズムを文脈とともに説明したい
- 変化の理論(ToC)が存在または構築可能であり、各ステップを支持する証拠を収集できる
- ドナー・資金提供者・政策立案者への「何がどう機能したか」の説明責任が求められている
向かない場面
- 変化の理論が不明確・構築不可能であり、貢献ストーリーの土台となるロジックを特定できない場合
- 「正確な効果量(何%の変化をプログラムが生んだか)」という精確な数値推定が求められる場面——貢献度分析は貢献の論証はできるが、統計的な効果量の推定は行わない
- 収集可能な証拠が極めて乏しく、主要な変化ステップを確認する手段がない
参加者・体制と成果物
評価者1〜2名が主導。プログラム担当者・受益者・外部専門家からの証拠収集と理論検証のためのインタビューが必要。外部評価者が独立して実施することで信頼性が向上
主な成果物
- 変化の理論(Theory of Change)の図と文書
- 貢献ストーリー報告書(各ステップの証拠評価・代替説明の検討を含む)
- 証拠マトリクス(各変化ステップ×証拠の種類・強度)
- 残された不確実性と追加証拠収集の提言
実施手順
- ステップ1: 因果帰属の問いを定式化「このプログラムは○○という成果に(どの程度)貢献したか」という評価クエスチョンを明確に定式化する。完全な帰属証明ではなく「貢献の論証」が目標であることを関係者と共有する。
- ステップ2: 変化の理論を明示・合意プログラムが成果を生み出す経路(活動→成果→インパクトの連鎖)を変化の理論として明示する。前提条件・外部要因も含め、関係者・実施者・専門家との合意を経て文書化する。
- ステップ3: 証拠を収集して各ステップを検証変化の理論の各ステップが実際に起きたかを支持・反証する証拠を既存データ・調査・インタビュー・行政記録等から系統的に収集する。量的・質的の双方の証拠を組み合わせる。
- ステップ4: 貢献ストーリーを構築収集した証拠を統合し、「このプログラムがこのように機能してこの成果に貢献した」という貢献ストーリーを作成する。理論の各ステップがどの程度証拠で支持されているかを明示する。
- ステップ5: 代替的説明を検討・反証観察された成果がプログラム以外の要因(他の政策・社会変化・経済的要因等)によって生じた可能性を系統的に検討し、それらを支持または反証する証拠を提示する。代替説明が強い場合は貢献の主張を修正する。
- ステップ6: 不確実性を明示して貢献を結論づける残された不確実性(収集できなかった証拠・検証できなかった仮定)を率直に示したうえで、プログラムの貢献に関する結論を証拠レベルとともに報告する。貢献ストーリーの強化に必要な追加証拠も提言する。
長所と限界
長所
- RCTや計量的手法が適用できない複雑な文脈でも、論理的・体系的な因果評価を可能にする
- 変化の理論を明示することで、何が機能し何が機能しなかったかという「学習」の側面も評価に組み込める
- 混合手法(量的・質的証拠の統合)と相性がよく、多様な証拠源を体系的に活用できる
- 評価プロセスが透明で関係者が参加しやすく、評価結果の活用・組織学習につながりやすい
限界
- 変化の理論の質と証拠収集の徹底度に評価の信頼性が大きく依存する——理論が弱い・証拠が薄い貢献ストーリーは説得力に欠ける
- 「貢献した」という判断の客観的な基準が明確でなく、評価者の判断に依存する部分が大きい
- この枠組みだけから寄与率や平均効果量は算出されない。量的推定を組み合わせる場合は、その方法と仮定を別に示す。
- 代替的説明の網羅的な検討は難しく、見落とした代替説明が存在する可能性を排除できない
⚠ よくある落とし穴
- 結論に合わせた理論づくりを避ける。評価の初期に担当者と理論を明示し、独立した視点や反証を取り入れて変更の履歴を残す。
- 証拠の選択的な使用——貢献を支持する証拠のみ取り上げ、反証する証拠を無視すると、ストーリーが偏る。代替的説明の証拠も公平に収集・提示する
- 不確実性を隠す——残された不確実性を率直に示さない貢献ストーリーは誠実さを欠き、評価への信頼を損なう。「強い証拠で支持される」「弱い証拠しかない」などの明確な記述が重要
- 代替説明を件数合わせで並べない。成果を説明し得る重要な外部要因や他の介入を根拠に沿って検討し、残る説明を報告する。
適用条件と根拠
- 変化の理論に合う証拠だけでなく、他の寄与要因と代替説明を検討して説明を改訂します。 [1]
研修が評価計画の導入を支えたかを検討する
説明用の仮想例です。団体が評価計画を使い始めた過程を調べる仮想例です。
| 経路・説明 | 仮想証拠 | 暫定解釈 |
|---|---|---|
| 研修で計画を作成 | 研修中の案と会議版に共通項目 | 計画作成への寄与と整合 |
| 上司の働きかけ | 会議招集メモに改善指示 | 職場導入を支えた別の要因 |
| 助成元の様式変更 | 変更通知が研修前に到着 | 導入の必要性を高めた可能性 |
この例から判断できること
研修が計画案の準備に寄与し、上司と助成元の要請が導入を支えたという説明を検討します。各要因への百分率配分はしません。
判断で間違えやすいこと
成果が出たので変化の理論全体を正しいとする
見直し方: 各段階の証拠と別経路を確認する
理由: 途中の仮説が成立しなくても別要因で成果が出るためです。
関係者の感想だけで寄与率70%とする
見直し方: どの変化をどの証拠が支えるかを記述する
理由: 貢献の筋道と割合の推定は別の検証だからです。
参照資料と確認箇所
- Contribution analysisBetterEvaluation
- 参照箇所
- Steps in the process
- 本文との対応
- 変化の理論に合う証拠だけでなく、他の寄与要因と代替説明を検討して説明を改訂します。
このページの引用情報
評価コンパス編集.「貢献度分析」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/contribution-analysis/
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更新履歴
- — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。 入力欄の位置・型・個数を保ち、フォームの固定条件や閾値の表記を修正。

