因果推論・実験因果推論閾値自然実験準実験局所的効果

回帰不連続デザイン

Regression Discontinuity Design
別名: RDD、回帰不連続設計、閾値分析

連続する指標の閾値で介入の割当が変わる制度を利用し、閾値の近くの結果を比較する方法です。閾値での局所的な差を推定し、遠く離れた対象へ自動的に一般化しません。 [1]

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難易度 上級 費用 中 期間 作業計画の参考例(共通の標準時間ではありません):データ整備に1〜3週間、分析・診断に1〜2週間

ひと目でわかる仕組み

成果割当変数(例: 点数)閾値(カットオフ)ジャンプ=効果対象外介入対象
割当の閾値の前後で結果がジャンプする大きさを効果とみなす。閾値近傍の局所的因果効果。

ランニング変数と閾値、実際の割当ルールを確認します。介入がなければ結果が閾値で滑らかにつながること、他の制度や操作による飛びがないことを検討します。 [1]

閾値で全員の受給が切り替わるsharp設計と、受給確率が変わるfuzzy設計を区別します。帯域幅と推定仕様を変えて結果の頑健性を確認します。 [1]

使う場面

  • プログラムの受給資格がテストスコア・収入・年齢などの数値的な閾値ルールで決まっており、そのデータが入手可能
  • 教育プログラム(成績基準による選抜)・社会保障(所得ラインによる受給資格)・補助金など閾値が明確な行政プログラムの遡及評価
  • 閾値で介入の受給または受給確率が変わる制度を利用できる場面
  • 閾値近辺の対象者への局所的な効果で十分な政策判断ができる場合

向かない場面

  • 閾値付近に対象者が少なく、十分な推定精度が確保できない(境界近辺のサンプルが極端に小さい)場合
  • ランニング変数が操作可能であり、対象者が閾値付近で意図的に変数値を操作している可能性がある場面
  • 閾値付近の局所的効果では不十分で、プログラム全体・全対象者への平均効果を知りたい場合

参加者・体制と成果物

計量経済学・統計の専門家1〜2名。行政データ・スコアデータへのアクセス権限を持つデータ管理者との連携が必要

主な成果物

  • RDDプロット(ランニング変数×結果変数の散布図+局所多項式フィット)
  • 不連続推定量・標準誤差・信頼区間の表
  • ロバスト性検定結果(帯域幅変更・プラセボ閾値等)
  • McCrary density test の結果(操作の有無)

実施手順

  1. ランニング変数と閾値の特定
    割当変数、閾値、実際の受給を記録する。閾値で受給が完全に切り替わるsharpか、受給確率が跳ぶfuzzyかを検討し、例外の運用を調べる。
  2. データの収集と閾値近辺の分布確認
    割当変数と成果、事前属性を収集し、密度・分布と制度の運用を調べる。密度の検定だけで操作なしと断定せず、離散値や得点の作られ方も考慮する。
  3. 閾値近辺の可視化
    ランニング変数を横軸に取った散布図に局所多項式回帰を重ねて描き、閾値でのジャンプを視覚的に確認する。bin幅の設定は複数試してグラフの安定性を確認する。
  4. 帯域幅の選択
    閾値近傍のデータ範囲と推定法を定め、選択基準を説明する。帯域幅を変えた分析を示し、都合のよい範囲だけを報告しない。
  5. RDD推定量の計算
    閾値の両側で条件付き成果を推定し、閾値での差を求める。sharpでは閾値上の平均効果、fuzzyでは追加仮定の下で成果の跳びを受給確率の跳びで割った局所的効果を検討する。区間推定は選んだ推定法に合わせる。
  6. ロバスト性検定
    帯域幅やモデルの変更、事前属性や別の閾値の検討を報告する。同じ閾値で別の介入が変わっていないかを確認する。検定で不連続が出ないことだけでは連続性を証明できない。

長所と限界

長所

  • 閾値での比較が妥当であれば、その近傍の介入効果を推定する設計になる
  • 既存の行政規則・受給資格基準をそのまま活用でき、新たな実験設計が不要
  • 分析の設定(閾値・ランニング変数)が透明であり、仮定の検証テストが多数確立している
  • 制度の割当ルールと連続性の根拠を具体的に検討できる

限界

  • sharpとfuzzyで推定対象が異なり、いずれも通常は閾値付近の効果である。全対象者への平均効果と同一視できない。
  • 対象者がランニング変数を意図的に操作できる場合(ちょうど閾値ラインに乗るよう調整する)は識別が崩れる
  • 閾値近辺のサンプルが少ないほど推定の不確実性が増大し、実用的な精度が得られないことがある
  • 閾値付近のみで成立する連続性仮定——閾値を境に結果変数の潜在的アウトカムが連続的に変化するという仮定——は反事実的であり証明できない

⚠ よくある落とし穴

  • 割当変数の操作や同じ閾値で変わる別制度を見落とす。制度資料、運用記録、分布と事前属性を合わせて点検する。
  • 帯域幅を結果に合わせて選ぶ。選択基準と複数設定の結果を示し、不確実性を報告する。
  • 閾値付近以外の対象者への一般化——「閾値付近の効果」が示されたに過ぎないのに「プログラム全体の効果」として解釈する誤り
  • 広い範囲に複雑な曲線を当てるだけで閾値の差を読まない。局所的な推定の仕様と感応性を点検する。

適用条件と根拠

  • 閾値による割当の仕組みを確認し、閾値近傍の効果として解釈します。 [1]
仮想例・実績ではありません

採点の閾値で研修を案内する

説明用の仮想例です。評価スコア60以上に研修を割り当てる仮想制度で、sharp RDDの推定値を説明します。

推定対象閾値60での仮想推定値
下側からの活用率の極限50%
上側からの活用率の極限62%
閾値での差12パーセントポイント

この例から判断できること

62−50=12ポイントは閾値での推定差です。帯域内の全員の単純平均差とは異なります。受給に例外があれば受給確率の飛びを調べ、fuzzy設計の仮定と推定へ変更します。

判断で間違えやすいこと

60点以上の全員と60点未満の全員を単純比較する

見直し方: 閾値近傍で両側の関数を推定する

理由: 離れたスコアの人では介入前の条件が大きく異なるためです。

受給の例外を無視してsharpとして報告する

見直し方: 実際の受給確率の飛びを確認して設計を選ぶ

理由: 割当ルールと受給が一致するかで推定の意味が変わるためです。

参照資料と確認箇所

  1. Development Research in Practice: Research design for impact evaluation
    World Bank DIME Analytics
    参照箇所
    Regression discontinuity
    本文との対応
    閾値による割当の仕組みを確認し、閾値近傍の効果として解釈します。
    資料確認日: (AI照合を含む)

このページの引用情報

評価コンパス編集.「回帰不連続デザイン」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/rdd/
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更新履歴
  • — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。 入力欄の位置・型・個数を保ち、フォームの固定条件や閾値の表記を修正。