総合フレームワーク因果メカニズム文脈依存何が誰に効くかPawson
リアリスト評価
Realist Evaluation
別名: 現実主義評価、CMO分析
「何が・誰に・どんな状況で・なぜ効くか」を問うアプローチ。Context(文脈)・Mechanism(メカニズム)・Outcome(成果)の構成(CMO構成)を核に置く。
難易度 上級 ●●●費用 高 ●●●期間 文献レビューとCMO仮説構築に2〜4週間。実証フェーズは数ヶ月〜1年以上
概要
Ray PawsonとNick Tilleyが1997年に『Realistic Evaluation』で提唱した評価アプローチ。「プログラムが効くのはプログラム自体の力ではなく、特定の文脈でメカニズムが発火するから」という存在論的リアリズムに基づく。RCT的な「何が効くか(Does it work?)」という問いに対し、「何が・誰に・どんな状況で・なぜ効くか(What works, for whom, in what circumstances, and why?)」という問いに転換する。
CMO構成(C=Context、M=Mechanism、O=Outcome)が中心概念で、「この文脈(C)でこのメカニズム(M)が働けばこの成果(O)が生じる」という仮説を構築・検証することが評価の目的。文献レビューとリアリスト合成(Realist Synthesis)としても広く使われる。犯罪予防・保健・教育・国際開発など幅広い政策評価に適用されている。
✓ こんな時に使う
- 「なぜこのプログラムが(この場所では)効いたのか、あの場所では効かなかったのか」を説明したいとき
- 文脈の異なる場所への移植・スケールアップを検討する際に、移植可能性を判断したいとき
- 既存の評価・研究から「効くメカニズム」を体系的に学習したいとき(リアリスト合成)
- プログラム理論を精緻化し、介入設計を改善したいとき
✕ 向かない場面
- メカニズムの解明より「この介入は平均的に有効か」という有効性の証明が目的の場合 — RCTやDIDが適切
- CMO仮説を構築するための先行知識・文献が不足しており、探索的研究から始める必要がある段階
実施手順
- リサーチクエスチョンのCMO変換「このプログラムは効くか」という問いを「どんな文脈で・どのメカニズムを通じて・どんな成果が生じるか」に再定式化する。これが評価全体の方向性を決める。
- 初期CMO仮説の構築文献・先行評価・プログラム実施者へのインタビューから、想定されるCMO構成を複数立案する。「もし〜という文脈で、〜のメカニズムが機能すれば、〜の成果が生じるだろう」という形式で記述する。
- データ収集の設計CMO仮説の各要素を確認・修正するためのデータ収集方法を設計する。文脈変数の測定、メカニズムの代理指標(例: 認知・感情の変化)、多様な成果の測定を含む。
- CMO仮説の検証・精緻化収集したデータと仮説を照合し、「C→M→O」のチェーンが成り立つか、どの文脈では成り立たないかを分析する。仮説の修正・棄却・精緻化を繰り返す。
- CMO構成の洗練と移植可能性の検討検証・精緻化されたCMO構成をまとめ、「このメカニズムが機能する文脈条件」を特定する。他の文脈への移植可能性と必要な適応を明示する。
- 政策・実践への提言CMO分析に基づき、「どんな文脈でこの介入を実施すべきか」「メカニズムを機能させるために何が必要か」という実践的提言を作成する。
長所と限界
長所
- 「なぜ効くか」のメカニズム解明により、単なる有無を超えた深い理解が得られる
- 文脈特定性の分析により、スケールアップ・移植の際の失敗リスクを低減できる
- RCTが困難な複雑な社会介入に対して厳密な因果思考を適用できる
限界
- CMO仮説の構築には高度な概念的・理論的スキルが必要
- メカニズムの実証的測定は困難で、代理指標への依存が大きい
- 「平均的効果」の数値を求めるドナーへの説明には不向き
⚠ よくある落とし穴
- 「CMO構成を作った」ことで満足し、仮説検証のデータ収集を怠る
- Mechanismをプログラム活動(「研修を実施する」)と混同する — MechanismはプログラムへのReasoningとResources(参加者の認知・感情・選択)
- 文脈変数を「都市/農村」など粗い分類で終わらせ、メカニズムに影響する具体的な文脈要素を特定しない