ひと目でわかる仕組み
使う場面
- 複数機関・コミュニティが関与する複雑な社会変化プログラムを設計・評価するとき
- 「なぜこのアプローチが効果的か」という根拠を関係者や資金提供者に示す必要があるとき
- 長期の変化目標に向けた中間段階の道筋を可視化したいとき
- ロジックモデルが「活動→産出」レベルで止まっており、より深い変化の仮説を掘り下げたいとき
向かない場面
- 変化の理由を一切検討せず、活動日程だけを整理する場合は、まず実施計画を作る。
- 経路を一度決めたら変更できないものとして扱う場合。複雑な事業では変化に応じた更新が必要。
参加者・体制と成果物
プログラム設計者・評価担当者・主要ステークホルダー・受益者代表。ファシリテーター1〜2名+6〜15名が計画例として。大規模プログラムでは複数回のワークショップ
主な成果物
- アウトカム・パスウェイ図
- 前提条件・根拠リスト付きの ToC ナラティブ文書
- 中間アウトカム指標リスト
実施手順
- 最終ゴールの合意対象者がどんな状態に変わることを目指すか、どの期間を扱うかを関係者と確認する。年数は事業の変化速度に合わせて決める。
- バックワードマッピング最終ゴールから逆算し、「そのゴールが達成されるには何が先に変わっていなければならないか」を問い続けて中間アウトカムを連ねる。
- 前提条件の明示化各ステップが成立するための前提(assumptions)を書き出す。「このコミュニティには既に信頼関係がある」等の暗黙の仮定を表に出す。
- 介入の位置づけ設計する介入(プログラム・政策)がアウトカム・パスウェイのどこに作用するかを特定し、介入の根拠(rationale)として記述する。
- 指標の割り当て各中間アウトカムに対して「どうなれば達成とみなすか」の指標を設定する。評価デザインマトリクスへの展開を見据えて測定可能な形で記述する。
- ToC ナラティブの作成図だけでなく、「なぜこの経路で変化が起きると考えるのか」を文章で説明するナラティブを添付する。図と文章のセットが完成形。
- 定期的な見直し実施を通じて得られた学習・証拠を反映し、前提条件の修正・経路の更新を行う。ToC は生きた仮説であり固定された計画書ではない。
長所と限界
長所
- 「なぜ変化が起きるか」の因果仮説を明示するため、評価クエスチョンの質が向上する
- プログラムの前提条件と限界を早期に可視化し、失敗リスクを低減できる
- 多機関・多セクターのパートナーシップにおける共通理解の構築に有効
- 変化の長期的な経路を描くため、中間評価のマイルストーン設定に直結する
限界
- 図と根拠の詳しさを目的に合わせないと作成負担が増える。小規模事業では主要な経路と前提に絞って始められる。
- 前提条件が多すぎると複雑になり、実務使用に耐えない図が生まれやすい
- 社会変化の複雑性を過度に単純化するリスクがあり、モデルが現実を誘導する危険性がある
⚠ よくある落とし穴
- ロジックモデルとの名称の違いにとらわれ、変化の理由や前提を説明しない。図の名称より、使う人が仮説と根拠を確かめられることを重視する。
- 完成後に棚上げされ、実際の評価・意思決定に使われない文書になる
- 専門コンサルタントだけで作成し、現場や受益者の視点が欠落する
- 前提条件をリスクとして扱わず、検証しないまま事業を進める
適用条件と根拠
- 前提は書き出すだけでなく、現状や関連する経験・証拠と照合して検討します。 [1]
相談窓口につながれない人の経路を考える
仮想の地域相談事業です。制度を知っていても相談をためらう住民に、同行支援を提供します。
| 変化の経路 | 成立に必要な条件 | 確かめること |
|---|---|---|
| 同行支援を知る→相談を申し込む | 相談内容が近隣に知られないと感じる | 未利用者が申し込まない理由 |
| 相談する→必要な制度の申請を進める | 利用可能な制度があり、申請手続に対応できる | 制度の対象外だった事例と手続中断の理由 |
この例から判断できること
広報不足と決めつけず、秘密保持への不安、制度要件、手続の負担を分けて確かめます。同行だけでは制度の対象外という障壁は解消しません。
判断で間違えやすいこと
長期成果から現在の活動へ矢印を一本引くだけで完成とする
見直し方: 申込み・相談・申請という中間段階を置き、各段階の障壁を書く
理由: 活動が作用する場所と、働かない条件を具体化するためです。
関係者が納得した説明を、因果効果が証明された理論と扱う
見直し方: 合意した仮説と実際に確認した証拠を分けて記す
理由: 納得しやすい説明でも、別の原因や反例が残るためです。
参照資料と確認箇所
- Logic Model Development GuideW.K. Kellogg Foundation · 2004
- 参照箇所
- Chapter 3: Developing a Theory-of-Change Logic Model for Your Program, pp. 27–34
- 本文との対応
- 問題・要因・前提と介入戦略をつなぐ変化理論の作成
このページの引用情報
評価コンパス編集.「セオリー・オブ・チェンジ」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/theory-of-change/
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更新履歴
- — 定義と前提の扱いを出典に合わせ、相談支援の仮想経路と全欄の記入例を追加。

