設計・セオリー関係者把握権力分析参加型計画評価設計マッピング
ステークホルダー分析
Stakeholder Analysis
別名: 利害関係者分析、ステークホルダーマッピング
事業・評価に関わる全ての関係者を特定し、関心・影響力・立場を把握する評価設計の起点となる分析。誰を評価プロセスに巻き込むか、誰の視点を優先するかを意思決定する基盤。
難易度 初級 ●●●費用 低 ●●●期間 半日〜1日(ワークショップ形式)
概要
ステークホルダー分析(Stakeholder Analysis)は、プロジェクト・政策・評価に関係するすべての個人・集団・組織を特定し、それぞれの利害関係・影響力・関心・立場を体系的に把握する手法。評価の文脈では、誰を評価の主要な情報提供者とするか、誰に結果を報告するか、誰の価値観・基準を評価判断に反映するかを決める基盤となる。
代表的な分析ツールは「権力(Power)×関心(Interest)マトリクス」で、4象限に関係者を配置することで関与の優先度を視覚化する。他にもベン図型の影響関係図、オニオン図(近さの可視化)、関心・影響・重要度の3軸分析など複数の技法がある。国際開発の PCM では分析の必須ステップとして位置づけられ、BetterEvaluation でも評価計画の初期ステップとして推奨されている。
注意すべきは、「ステークホルダー」の定義が広すぎると分析が拡散し、狭すぎると重要な声が漏れることで、適切なスコープ設定が鍵となる。
✓ こんな時に使う
- 評価設計の初期段階で、誰の視点・ニーズを評価クエスチョンに反映すべきかを整理したいとき
- 参加型評価・コミュニティ評価で、誰を参加メンバーに含めるかを決定する前
- 複数機関・多セクターが関与する事業で、各関係者の役割と利害を把握したいとき
- 評価結果の普及・活用計画で、誰にどのように伝えるかを設計するとき
✕ 向かない場面
- 関係者が少数で明確な小規模プロジェクト — 形式的な分析より直接の対話で足りる
- 権力構造の分析が政治的に非常にセンシティブな文脈 — 分析結果の取り扱いに慎重な判断が必要
実施手順
- ステークホルダーのリストアップ「誰がこの事業・評価に影響を与えるか・影響を受けるか」を問い、個人・集団・組織を網羅的に書き出す。「声を上げられない人」(子ども・周辺化されたグループ)を意識的に含める。
- 属性情報の整理各ステークホルダーについて、役割・立場・主な関心事・評価結果の活用意図・関係する評価クエスチョンを簡潔に記述する。
- 権力×関心マトリクスへのマッピング横軸に「この事業・評価への関心の高さ」、縦軸に「事業・評価に対する影響力(権力)」を設定し、各関係者を4象限に配置する。
- 関与戦略の策定各象限の特性に応じた関与アプローチを決める。高権力×高関心:緊密に協働。高権力×低関心:満足を保ち、信頼を維持。低権力×高関心:積極的に情報提供・参加機会を確保。低権力×低関心:状況をモニタリング。
- 脆弱・周辺化グループへの注目権力×関心マトリクスで「低権力×低関心」に位置づけられる人々でも、評価の公正性の観点から声を収集する方法を別途検討する。
- 定期的な見直しステークホルダーの立場・関心・関係は事業の進展とともに変化する。評価の各局面で分析を更新する。
長所と限界
長所
- 評価への参加者・情報提供者の選定根拠が明確になり、評価の正当性が高まる
- 潜在的な抵抗・コンフリクトを早期に可視化し、マネジメントできる
- 評価の「誰のための評価か」という目的設定の基盤となる
限界
- 静的なスナップショットであり、関係者の立場変化への追随が必要
- 権力関係の描写が政治的なセンシティビティを生む可能性がある
- 「マッピングして終わり」になりやすく、実際の関与戦略に結びつかないことがある
⚠ よくある落とし穴
- 受益者(最終的な変化を目指す人々)をステークホルダーリストに入れ忘れる、または「低関心・低権力」に分類して軽視する
- 組織・機関レベルの分析に終始し、その中の異なる立場・利害(ジェンダー・民族・年齢等)の違いを見落とす
- 分析結果を内部資料として扱い、関係者間での共有・検証を行わない