評価の実務ガイド

ベースライン調査とは?エンドライン調査との違い・設計手順・注意点

ベースライン調査とエンドライン調査の意味、いつ何を測るか、比較可能な設問の作り方、実務での注意点を解説します。

前後の状態を、同じ条件で比べる

前後の差が分かっても、その全てを事業の効果とは断定できません。 本文で詳しく読む

まず結論

ベースラインは介入前や観察期間の開始時の状態、エンドラインは終了時の状態です。比較には、同じ意味の指標、調査条件、対象範囲を保つことが大切です。前後の差が分かっても、その全てを事業の効果とは断定できません。 [1]

事業終了後に「始める前と比べてどう変わったか」を問われて、事前データがなく困るケースは少なくありません。ベースラインは、後から取り直せない出発点の情報です。

ただし、長いアンケートを開始前に配ればよいわけではありません。どのアウトカムをどの時点で比較し、結果を何の判断に使うのかを先に決めることで、負担の少ない調査にできます。

比較できる開始時と終了時の記録をつくる

調査の役割と設計を確かめ、比較条件と因果効果の限界を整理します。

ベースラインとエンドラインの役割

ベースラインは開始時点の状態、エンドラインは事業の終了時点または一定期間後の状態を測ります。同じ対象・同じ定義・近い条件で測るほど、差の解釈がしやすくなります。

例えば就労支援なら、就労状況や応募行動など、開始前と終了時に同じ定義で確認できる項目を選びます。終了後の継続性を知りたい場合は、追跡時点を別に計画します。

ベースラインとエンドラインの役割
時点主な目的確認する内容
開始前出発点を把握する対象属性、現状、課題、既存の行動・知識
実施中変化の兆しと運営を確認する参加状況、初期変化、離脱理由、実施品質
終了時変化と次の判断を確認するアウトカム、満足度、継続意向、改善点
終了後持続性を確かめる行動の定着、状態の維持、波及効果
[1]

設計の手順

最初に、終了時に答えたい問いと主要な変化を選びます。項目数を固定せず、対象者が答えられるか、同じ定義で追えるか、記録を継続できるかを確認します。

ベースラインとエンドラインでは、設問文、選択肢、尺度、集計単位を原則として揃えます。変更が必要な場合は、何を変えたかを記録し、単純比較できない可能性を報告に明記します。

  1. 評価クエスチョンと主要アウトカムを決める
  2. 開始前に存在するデータを棚卸しする
  3. 追加で測る指標と設問を最小限にする
  4. 対象、実施時期、収集方法、担当者を決める
  5. 終了時にも同じ定義で測れるか確認する
  6. 欠測・離脱・外部要因を記録する
[2]

比較可能にするためのポイント

同じ形式の数字でも、同じ意味を測れているとは限りません。質問文、質問の順序、対面・電話・オンラインなどの方法が変わると、回答も変わる可能性があります。変更が必要なら、その影響を確かめ、比較の限界を記します。

対象者の入れ替わり、途中離脱、季節性、制度変更なども結果に影響します。変化が見えたときは、事業以外の説明がないかを検討し、必要に応じてインタビューや記録で背景を補います。

  • 指標の定義、単位、回答尺度を揃える
  • 同じ対象者を追うか、集団全体を比べるか決める
  • 開始・終了時の回答率と欠測理由を残す
  • 大きな外部要因や実施条件の変更を記録する
  • 量的な差を質的情報で解釈する
[2]

無理に因果効果を断定しない

前後比較で変化が見えても、その変化が事業だけによって起きたとは限りません。対象者の自然な変化、他の支援、社会情勢などが影響する可能性があります。前後比較は成果の把握には役立ちますが、因果効果の証明とは区別して報告します。

因果関係をより強く検討する必要がある場合は、比較群、介入前の複数時点データ、貢献度分析などを検討します。一方で、小規模事業では、比較の限界を明記しながら実践的な意思決定に使うことが現実的です。

  • 前後の変化と事業の因果効果を混同しない
  • 比較群があるか、代替説明を検討できるか確認する
  • 対象者ごとの変化と全体平均を分けて見る
  • 結論にはデータの限界を添える
[3]
仮想例・実績ではありません

追跡できた人の前後差を正しく書く

説明用の仮想例です。相談支援20人のうち、同じ質問に開始・終了両方で答えた15人を集計します。

集計開始時終了時読み方
対応する15人の平均得点2.4点3.1点同じ15人では平均0.7点上昇
追跡できない5人開始時の記録あり未回答変化は不明
調査条件同じ5段階の質問同じ文言と回答方法本人の自己評価の変化

この例から判断できること

15人の前後差を20人全員の変化と書きません。自己評価の上昇を実際の行動変化や事業の因果効果と読み替えることも避けます。

判断で間違えやすいこと

開始時20人と終了時15人の平均を同一個人の変化とする

見直し方: 対応する人の分析と、各時点の全回答者の集計を分ける

理由: 回答者構成の変化が平均差に混ざるためです。

終了時だけ質問文を分かりやすく変える

見直し方: 可能なら変更の影響を試行し、比較条件の差を記載する

理由: 測る道具の変化を対象者の変化と誤認しないためです。

次に手を動かす

記述統計シートで開始・終了の対象者の内訳と要約値を整理する

よくある質問

ベースライン調査は必ず事業開始前に必要ですか?

開始前のデータが最も比較しやすいですが、既存の行政統計、利用記録、過去の調査などで代替できることもあります。代替データの定義と限界は確認します。

エンドライン調査はいつ行うべきですか?

見たいアウトカムが起きる時期に合わせます。研修直後なら知識、数か月後なら行動、さらに後なら状態の変化を確認するなど、時間差を考慮します。

同じ人を追跡できない場合はどうしますか?

開始時と終了時の集団比較はできますが、個人の変化としては読めません。対象属性を揃え、回答者構成の違いを確認した上で解釈します。

参照資料と確認箇所

  1. Glossary of Key Terms in Evaluation and Results-Based Management for Sustainable Development (Second Edition)
    OECD · 2023
    参照箇所
    Baseline / Baseline study(本文 p.21)/ End line(本文 p.30)
    本文との対応
    開始前の状態と終了時の状態を比較するための基準
    資料確認日: (AI照合を含む)
  2. Best Practices for Survey Research
    American Association for Public Opinion Research
    参照箇所
    Planning Your Survey / How can I measure change over time? / What kinds of testing should I do before fielding a survey? / Analyzing and reporting the survey results
    本文との対応
    問いに合う設問、測定条件の一貫性、事前試行、非回答と報告の透明性
    資料確認日: (AI照合を含む)
  3. Is My NGO Having a Positive Impact?
    David Evans / Bruce Wydick(World Bank Development Impact) · 2016
    参照箇所
    Before and After / Beneficiaries and non-beneficiaries
    本文との対応
    NGOの成果把握と因果効果の違い、前後比較・参加非参加比較の限界
    資料確認日: (AI照合を含む)
内容更新: 資料確認日: (AI照合を含む)人の監修記録なし説明用の仮想例あり編集方針・確認範囲このページを引用訂正したい箇所を伝える

このページの引用情報

評価コンパス編集.「ベースライン調査とは?エンドライン調査との違い・設計手順・注意点」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/guides/baseline-endline/
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更新履歴
  • — 方法の原典と実務上の整理を区別し、固有の仮想例・判断例・次の行動を追加。分類や測定条件の断定を見直し。