データ収集量的調査サンプリング尺度設計オンライン調査事前後比較
質問紙調査
Survey / Questionnaire
別名: アンケート調査、サーベイ、質問票調査
標準化された質問票を用いて多数の対象者から系統的にデータを収集する手法。量的把握・事前後比較・集団間比較に強く、評価の基幹的データ収集手段として広く使われる。
難易度 中級 ●●●費用 中 ●●●期間 設計2〜4週間、実施1〜4週間、分析1〜2週間(規模による)
概要
質問紙調査(Survey)は、あらかじめ設計した質問項目を対象者に示し、回答を収集・集計する量的調査の代表的手法。19世紀後半の社会統計・センサス実務に起源を持ち、20世紀に心理測定学・標本理論の発展とともに精緻化された。国際機関ではWHO・世界銀行・OECDの各種指標調査、日本では内閣府の世論調査や厚労省の各種実態調査など、政策評価の根幹を支えている。
設問設計では、測定概念を信頼性・妥当性の高い尺度に落とし込む作業が核心であり、リッカート尺度・意味差別法(SD法)・既存の標準化尺度(例: WHO-5)の活用が実務の定石。オンライン調査ツール(Google Forms、SurveyMonkey、LimeSurveyなど)の普及で低コスト実施が可能になった一方、回収率の低下と選択バイアスへの対処が実務上の最大課題となっている。事業評価では事前・後比較設計と組み合わせて変化の量的把握に使われることが多い。
✓ こんな時に使う
- 多数の対象者(50名以上)から量的・比較可能なデータを収集したい
- 事業参加前後で態度・知識・行動の変化を数値で示したい
- 地域や属性別の集団間比較を行いたい
- 既存の標準化尺度(生活満足度・心理的健康など)を用いて他調査と比較したい
- 限られた予算で広域の実態把握を行いたい
✕ 向かない場面
- 対象者が少数(10〜20名程度)で個別の深い経緯や文脈の理解が目的の場合 — インタビューが適する
- 質問紙に答えるリテラシーや言語能力に著しい格差がある集団(就学前児童・識字率が低い地域等)
- 回収率が見込めない場面での因果推論 — 選択バイアスが強く、結果の解釈が難しくなる
実施手順
- 評価目的と測定概念の確認「何を・誰から・どんな目的で測るか」を評価クエスチョンに照らして整理する。測定すべき概念(知識・態度・行動・満足度など)を明確にし、概念ごとに指標を決める。
- 設問設計と尺度選定既存の標準化尺度が使えるか確認し、可能な限り流用する。オリジナル設問は選択肢の網羅性・排他性・中立性を確認。誘導質問・二重質問・否定表現を排除する。
- サンプリング計画の策定母集団の定義、標本サイズ(統計的検出力・効果量から算出)、抽出方法(無作為・系統・層化・利便性)を決める。回収率低下を見越したオーバーサンプリングを検討する。
- プリテスト(予備調査)5〜10名を対象にプリテストを行い、設問の意味理解・回答所要時間・技術的な不具合を確認する。回答が集中しすぎる設問や未回答が多い設問を修正する。
- 調査の実施と回収率向上初回配布後のリマインダー送付(1〜2回)・郵送調査ではSASEの同封・インセンティブの提供など回収率向上策を実施する。目標回収率(最低50%以上、可能なら70%)を事前設定する。
- データクリーニングと分析欠損値・外れ値・一貫性チェック(全項目で最短時間など不正回答の検出)を行う。記述統計・クロス集計・変化量の検定(対応ありt検定など)を適用し、評価クエスチョンに回答する。
- 結果の解釈と限界の明記回収率・サンプリング方法に起因するバイアスを率直に報告する。統計的有意性と実質的意義(効果量)を区別して解釈し、過大解釈を避ける。
長所と限界
長所
- 多数の対象者から標準化されたデータを効率よく収集できる
- 量的指標として集計・比較・統計分析が可能
- 匿名性を確保しやすく、センシティブな項目にも回答を得やすい
- 標準化尺度を使えば他の調査・文献と数値比較できる
限界
- 設問で想定していない複雑な文脈や経緯を把握できない
- 回収率の低下と選択バイアスによって結果が歪む危険性が高い
- 設問設計の質が結果の信頼性を左右するため、専門的なスキルを要する
- 回答者が質問の意図を誤解していても調査者は気づきにくい
⚠ よくある落とし穴
- 「全員に配ったから大丈夫」という回収率軽視 — 20〜30%の回収率では選択バイアスが深刻。回収率と未回答者の属性を必ず分析する
- 設問数の多すぎ — 30問超えで回答疲れが生じ、後半の回答品質が著しく低下する。20問以内を目安に
- 「事後に思い出して答えてもらう」事前状況の把握 — 事前調査なしに「事業前はどうでしたか」と聞いても想起バイアスが強い。事前後設計を最初から組む