参加型・質的アプローチ強み志向組織開発関係者参加変革ポジティブ
アプリシエイティブ・インクワイアリー
Appreciative Inquiry
別名: AI(エーアイ)、AI評価、鑑賞的探究
強み・成功体験・可能性から出発し、組織や地域が望む未来を共創する組織開発由来の手法。評価では関係者の「何がうまくいったか」に焦点を当てた参加型評価・プログラム改善に活用される。
難易度 中級 ●●●費用 中 ●●●期間 1〜3日間(AIサミット形式)〜数週間(複数セッション形式)
概要
アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)は、David Cooperrider(ケース・ウェスタン・リザーブ大学)が1980年代に組織開発の場で開発した手法。問題探索(What's wrong?)ではなく、肯定的探究(What gives life?)から出発することで、関係者のエネルギーと参加意欲を引き出す。
中心となるのは4Dサイクル:Discovery(過去・現在の強みと成功体験の探索)→Dream(望ましい未来の構想)→Design(変革のための設計)→Destiny/Deliver(実践への移行)。この循環を通じて組織や地域が自らの強みを土台に変革を設計する。
評価の文脈では、プログラム終了時の参加型評価、コミュニティ開発の振り返り、スタッフ開発を兼ねた評価ワークショップなどで使用される。成功事例・最善の実践を組織的に学習する場として機能し、関係者の評価への参加意欲を高める効果がある。
✓ こんな時に使う
- 関係者が「問題探し」に疲弊しており、強みから出発する対話で評価参加を促進したい
- プログラム終了時のレトロスペクティブで「何がうまくいったか」を体系的に収集・共有したい
- コミュニティ開発・組織変革において、参加者が将来の方向性を共創するプロセスが必要な時
- スタッフの学習と組織能力強化を評価と同時に実現したい
✕ 向かない場面
- 深刻な権力不均衡や対立がある場面では、強み志向のプロセスが表面的になり潜在問題を隠蔽する恐れがある
- 否定的な結果・失敗の徹底的な原因分析が説明責任上求められる場合 — 問題志向の評価手法が適切
実施手順
- テーマとAI質問の設計(Define)探究するポジティブテーマを設定する(例:「最も効果的な支援の瞬間」「地域との信頼関係が最も深まった時」)。AI質問は過去の成功体験を引き出す具体的・開放的な問いとして設計する。
- Discovery:強みと成功体験の探索ペアインタビューやグループ対話を通じて、参加者が最も誇りに思う経験・成功事例・強みを語り合う。「最高の時」を中心に、その時何が起きていたか、何が可能にしたかを掘り下げる。
- Dream:望む未来の構想Discovery で明らかになった強みを土台に、「もし最高の状態が常に実現していたら」という前提で望ましい未来を描く。絵・劇・物語などの創造的な表現を取り入れると参加者の想像力が広がる。
- Design:変革の設計Dream を実現するために必要な構造・プロセス・関係性・行動を設計する。「プロポジション(provocation proposition)」として「〜は〜である(あるいはすべき)」という力強い宣言として表現する。
- Destiny/Deliver:実践への移行参加者が具体的なコミットメントと行動計画を形成する。誰が・何を・いつまでに行動するかを明確化し、フォローアップの仕組みを設計する。
長所と限界
長所
- 関係者の参加意欲・モチベーションを高め、評価活動への抵抗感を低減する
- 組織・地域の暗黙知(成功のパターン)を引き出し共有知化できる
- 評価と組織開発・能力強化を同時に実現する相乗効果がある
- 文化・背景が多様なグループでも強みの共有は取り組みやすい
限界
- 批判的分析・問題の根本原因探索が弱くなるため、問題志向の評価目的には不向き
- 強みや成功への偏重が「失敗からの学習」を妨げる可能性がある
- 複雑な権力構造・利害対立がある文脈では慎重な設計が必要
⚠ よくある落とし穴
- 「良いことだけ話す」雰囲気が固定化し、課題や失敗を語れない空気になる — ファシリテーターが適切に「改善の余地」の対話も組み込む
- Discovery で終わり、Design/Destiny まで到達しないと「気持ちよかっただけ」のワークショップになる
- 参加者が強みを語っても、組織的な意思決定・資源配分の変化につながらず形骸化する