ひと目でわかる仕組み
- 比較対象の確定
- アウトカム指標の選定
- 費用の把握
- 効果データの収集・分析
- CERおよびICERの算出
- 閾値との比較と不確実性分析
使う場面
- 同一目標を達成する複数の介入・プログラムの費用効率を比較し、最も効率的な手段を選びたいとき
- 予算制約のもとで限られた資源をどの介入に優先配分するかを判断するとき
- 保健・医療・教育分野でアウトカムの貨幣換算が倫理的・政治的に受け入れられにくいとき
- ガイドライン策定・医療技術評価(HTA)で新しい治療法・介入の採否を検討するとき
向かない場面
- 達成目標が異なる複数の事業を横断的に比較したい場合 — 単一の共通アウトカム指標がなければCEAは機能しない(CBAかValue for Money評価が適する)
- 複数の異なる成果や公平性が重要で、単一の共通成果だけでは判断できない場合は、成果別の整理や多基準の判断を組み合わせる
- 費用の把握自体が困難な場面(実施体制が複雑で費用の帰属が不明確な場合)
参加者・体制と成果物
評価担当者(経済分析主担当)、プログラム担当者(費用データ提供)、統計担当(効果量推計)。医療・教育等の分野専門家のレビューを得ることが望ましい。
主な成果物
- 費用・効果データ一覧表(選択肢別)
- CER・ICER算出表
- 感度分析(確率的感度分析のコスト効果平面・CEAC)
- 費用効果分析報告書
実施手順
- 比較対象の確定評価する介入と比較対象(無介入・既存手段・代替案)を明確にする。比較対象の選択はICERの値を決定的に左右するため、慎重に合意形成する。
- アウトカム指標の選定比較案に共通の自然単位の成果と期間を定める。効果の推定方法と因果解釈の根拠を確認する。複数の成果を扱う場合は、それぞれの分析を分けてトレードオフを示す。
- 費用の把握直接費用(人件費・物品費・施設費等)と間接費用(受益者の機会費用等)を分析視点に合わせて計上する。費用の算出方法と根拠を文書化する。
- 効果データの収集・分析比較対象ごとのアウトカムを測定・推計する。観察研究の場合は交絡要因を制御し、因果推論の限界を明記する。サンプルサイズと統計的不確実性を確認する。
- CERおよびICERの算出比較案間の増分費用と増分効果を計算する。高費用・低効果の案や拡張支配の扱いを検討し、残る案の間でICERを解釈する。平均費用効果比の小ささだけで選ばない。
- 閾値との比較と不確実性分析適用可能な閾値や予算・成果に対する価値判断と比較する。閾値がなくても増分費用と効果を示し、感度分析で不確実性を検討する。負のICERは増分費用と増分効果の符号に戻って解釈する。
長所と限界
長所
- アウトカムを貨幣換算しないため、健康・福祉・教育分野での倫理的な受け入れやすさが高い
- 同一目標のもとで複数の代替手段を直接比較でき、限られた予算での優先順位付けに役立つ
- 成果の貨幣換算を省けるが、費用と効果のデータ収集・推定には相応の資源が必要
- ICERは政策立案者・資金提供者に理解されやすいシンプルな指標
限界
- 共通の成果単位がない事業を、単一のICERでそのまま横断比較できない
- 費用対効果の「閾値」設定が恣意的になりやすく、採択・不採択の判断が閾値の選択に大きく依存する
- 因果帰属(観察されたアウトカムが介入によるものかどうか)の問題がCBAと同様に存在する
- 複数のアウトカム次元(例:健康と社会参加)を単一指標に集約すると重要な情報が失われる
⚠ よくある落とし穴
- ICERの比較対象(基準線)の選択が不適切だと全体の結論が変わる。「現状何もしないこと」と「既存の最良手段」では全く異なるICERが出る
- 効果データの観察研究に基づく場合、セレクションバイアスの補正が不十分なまま報告されるケースが多い。効果の過大推計がICERを人工的に低くする
- 費用に実施コスト(人件費・研修費・システム整備費)を含め忘れ、見かけ上の費用対効果が良くなる「費用の過少計上」
適用条件と根拠
- 選択肢の比較では総費用/総効果だけでなく、適切な比較案間の費用と効果の増分を確認します。 [1]
申請支援の二つの案を比較する
説明用の仮想例です。A案とB案を同じ対象と期間で比べ、追加的な申請完了者を効果とする仮想例です。
| 案 | 費用 | 追加申請完了者 | 平均費用効果比 |
|---|---|---|---|
| A | 10万円 | 10人 | 1万円/人 |
| B | 16万円 | 20人 | 0.8万円/人 |
| B対Aの増分 | 6万円 | 10人 | ICER=0.6万円/追加1人 |
この例から判断できること
Bへの変更で1人追加する費用は6,000円です。効果の測定が因果効果を表すか、6,000円を投じる価値と予算があるかは、この表だけでは決まりません。
判断で間違えやすいこと
各案の平均比率の差をICERとする
見直し方: 費用の差を効果の差で割る
理由: ICERは比率同士の引き算ではないためです。
効果が小さくても費用が少なければ必ず採用する
見直し方: 失う効果と節約費用、機会費用を検討する
理由: 安いことだけでは目的への貢献を判断できないためです。
参照資料と確認箇所
- Developing NICE guidelines: Incorporating economic evaluationNational Institute for Health and Care Excellence
- 参照箇所
- Presentation of results / incremental approach
- 本文との対応
- 選択肢の比較では総費用/総効果だけでなく、適切な比較案間の費用と効果の増分を確認します。
このページの引用情報
評価コンパス編集.「費用効果分析」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/cea/
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更新履歴
- — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。

