ひと目でわかる仕組み
- リサーチクエスチョンとPICO/PICO-Sの設定
- プロトコルの事前登録
- 文献の網羅的検索
- スクリーニングとデータ抽出
- バイアスリスク評価
- 効果量の統合(メタアナリシス)または叙述的統合
- PRISMA報告と解釈
使う場面
- 特定の介入・プログラム(例:就労支援研修、条件付き現金給付)の効果について、既存研究を網羅的に総合しエビデンスベースを示したいとき
- 複数の評価研究の結果が矛盾しており、全体として何が言えるかを統計的に整理したいとき
- 既存研究の結果を体系的に整理し、統合が適切なら平均的な効果と不確実性を示したい
- 新規評価の立案前に、先行研究から既知の効果量・調整要因を把握し評価設計の根拠を固めたいとき
向かない場面
- 一次評価・研究データが存在しない(または極めて少ない)新規の介入 — レビューする研究がなければ実施できない
- 研究間の介入・測定方法・文脈の異質性が高すぎる場合 — 統計的統合(メタアナリシス)が不適切になり、叙述的レビューに留まる
- 必要な検索と研究評価、統計的な検討を意思決定期限内に行えない場合
参加者・体制と成果物
2名以上のレビュアー(スクリーニング・データ抽出の独立実施)、統計担当(メタアナリシス)。外部統計専門家や情報学専門家(検索式設計)との協働が推奨。
主な成果物
- PRISMAフローダイアグラム(検索〜採用の件数推移)
- 採用研究の特性一覧表
- フォレストプロット(統合効果量と各研究の効果量)
- システマティックレビュー報告書
実施手順
- リサーチクエスチョンとPICO/PICO-Sの設定Population(対象集団)・Intervention(介入)・Comparison(比較対照)・Outcome(アウトカム)をPICO形式で明確化する。これがすべての検索・スクリーニング判断の基準となる。
- プロトコルの事前登録PROSPERO(システマティックレビューの国際登録システム)等に研究プロトコルを事前登録することで、恣意的な後付け変更を防ぎ、透明性を高める。
- 文献の網羅的検索PubMed・PsycINFO・ERIC・Web of Science・Google Scholar等の複数データベースで系統的に検索する。灰色文献(学位論文・機関報告書・会議録)も含める。検索式と検索日を記録する。
- スクリーニングとデータ抽出2名の独立したレビュアーがタイトル/アブストラクト→全文の2段階でスクリーニングし、不一致は議論で解決する。採用論文から効果量・サンプルサイズ・介入内容・測定方法等のデータを抽出する。
- バイアスリスク評価各研究の内的妥当性をCochrane RoB(RCT用)・Newcastle-Ottawa Scale(観察研究用)等の標準化ツールで評価する。バイアスリスクが高い研究を感度分析で除外したとき結論が変わるかを確認する。
- 効果量の統合(メタアナリシス)または叙述的統合対象・介入・成果・設計の比較可能性を検討して統合の適否を決める。I²の固定閾値で自動選択せず、研究間差と推定対象から固定効果またはランダム効果モデル等を選ぶ。ランダム効果モデルも異質性やバイアスを解決するものではない。
- PRISMA報告と解釈PRISMA 2020チェックリストとフローダイアグラム(検索→スクリーニング→採用の件数推移)に従って報告する。統合効果量の実質的意義・限界・エビデンスギャップ・政策含意を記述する。
長所と限界
長所
- 単独研究よりサンプルサイズが実質的に大きくなり、効果量の推定精度が上がる
- 研究間のばらつき(異質性)の検討がどのような文脈で効果が出やすいかの知見を与える
- PRISMA等の国際標準に従うことで再現性・透明性が確保され、政策立案の根拠として高い説得力を持つ
- エビデンスギャップ(何がまだ明らかでないか)を可視化し、次の評価・研究の優先課題を示す
限界
- 出版バイアス(Publication Bias)——有意な結果の研究が論文化されやすく、効果の過大推計につながる。ファンネルプロットやEgger検定は研究数、標準誤差のばらつき、効果尺度等に照らして適用を判断する。非対称性は小規模研究効果を示す場合があり、出版バイアスだけを診断するものではない。未出版研究や登録情報も確認し、検定を使わない場合は理由を記す
- ゴミ入りゴミ出し(GIGO)——一次研究の質が低ければ統合しても質の低い結論しか得られない
- 高い異質性がある場合、統合効果量の解釈が困難になり「平均」が代表しない状況が生じる
- 複雑な社会介入(コレクティブインパクト等)の因果メカニズムを捉えるにはRealist Synthesisなどの代替アプローチが必要
⚠ よくある落とし穴
- 検索戦略の不十分さ — 英語文献のみ・単一データベースに限定すると重要な研究を見落とす。多言語・多データベース・灰色文献を含める
- 異質性を無視して統合 — I²が高いにもかかわらず無理に統合効果量を算出し、誤解を招く単一の数値を報告する
- 研究のバイアスを評価せず統合すると、偏りを精密にまとめることがある。採用した評価と感度分析、その限界を示す。
適用条件と根拠
- システマティックレビューにメタアナリシスは必須ではなく、統合の意味と研究間の違いを検討します。 [1]
二つの学習支援研究を統合する条件を考える
説明用の仮想例です。仮想研究AとBが同じ得点尺度と時点を用い、それぞれ平均差2点・4点、標準誤差が両方1点だったとします。
| 研究 | 平均差 | 標準誤差 | 固定効果の重み |
|---|---|---|---|
| 仮想A | 2点 | 1点 | 1/1²=1 |
| 仮想B | 4点 | 1点 | 1/1²=1 |
| 計算例 | (2+4)/2=3点 | 統合SE=1/√2≈0.707点 | 同一効果を仮定した算式 |
この例から判断できること
3点は仮定付きの計算例です。対象や介入の違いとバイアスを検討せず採用しません。二研究だけでは出版バイアスや異質性の評価にも大きな不確実性があります。
判断で間違えやすいこと
有意な研究だけを集める
見直し方: 採用基準を結果から独立に設定する
理由: 結果で研究を選ぶと推定が偏るためです。
I²が低いから固定効果を自動選択する
見直し方: 研究の意味と推定対象からモデルを選ぶ
理由: 少数研究では異質性の推定自体が不確実だからです。
参照資料と確認箇所
- Cochrane Handbook: Chapter 10, Analysing data and undertaking meta-analysesJonathan J. Deeksほか/Cochrane
- 参照箇所
- 10.1 / 10.2 / 10.10.3 / 10.10.4
- 本文との対応
- システマティックレビューにメタアナリシスは必須ではなく、統合の意味と研究間の違いを検討します。
このページの引用情報
評価コンパス編集.「メタアナリシス・システマティックレビュー」. 評価コンパス, 2026-10-07更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/meta-analysis/
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更新履歴
- — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。
- — 独立内容点検(content-check-causal)に基づく訂正。ファンネルプロット等の適用条件、非対称性の解釈、非適用理由の記録を明記。

