経済性評価QALYDALYHTA医療技術評価効用値

費用効用分析

Cost-Utility Analysis
別名: CUA、費用-効用分析

健康関連の生活の質と生存期間をQALYなどでまとめ、費用と比較する経済評価です。尺度、価値付け、期間、比較案を揃え、追加費用/QALYを検討します。 [1]

内容更新: 資料確認日: (AI照合を含む)人の監修記録なし説明用の仮想例あり編集方針・確認範囲このページを引用訂正したい箇所を伝える
難易度 上級 費用 高 期間 作業計画の参考例(共通の標準時間ではありません):3〜12ヶ月(効用値の計測・系統的文献レビューを含む場合)

ひと目でわかる仕組み

  1. 分析枠組みの設定
  2. 費用データの収集
  3. 効用値(utility value)の特定
  4. QALYの算出
  5. ICERの算出
  6. 不確実性分析
  7. 閾値判断と文脈的解釈
実施手順の流れ。各段階の内容は「実施手順」で確認できます。

QALYは各健康状態の期間に効用値を掛けて合計する指標です。効用値は使用尺度と価値付け方法に依存し、単なる満足度点数とは異なります。 [1]

増分費用を増分QALYで割ってICERを求めます。分析視点、割引、採択基準は制度ごとに確認し、健康状態の評価を個人の価値の評価と取り違えないようにします。 [1]

使う場面

  • 新薬・医療機器・医療技術の公定価格への収載・価格設定において費用対効果を評価するとき(HTA:医療技術評価)
  • 健康アウトカムが複数の次元(生存延長と生活の質改善)を持つ介入を評価し、QALYという単一指標に統合したいとき
  • 異なる疾患領域にわたる複数の介入を同一の物差し(QALY/DALY)で比較し、予算配分の優先順位付けを行うとき
  • 国際的なガイドライン(NICE/HTAガイドライン等)に準拠した経済評価報告書を作成する必要があるとき

向かない場面

  • 健康以外の便益が判断の中心で、QALYでは重要な価値を表せない場合。教育・環境の介入でも健康への影響を評価する用途はあり得る。
  • 効用値の計測に十分なデータが存在しない稀少疾患・新興疾患 — 効用値を代用値で推定すると分析の信頼性が低下する
  • 健康格差・公正性の評価が主要課題の場合 — QALY最大化は集計効率優先であり分配的公正を内包しない

参加者・体制と成果物

医療経済学者(分析主担当)、臨床専門家(疾患自然史・臨床効果の確認)、統計担当(PSA)、規制担当(HTAガイドライン適合確認)。

主な成果物

  • 費用・QALY推計表(介入群・対照群)
  • ICER計算結果と費用対効果平面プロット
  • 確率的感度分析(PSA)結果・CEAC
  • CUA報告書(HTA提出用形式を含む)

実施手順

  1. 分析枠組みの設定
    疾患・介入・比較対象(コンパレーター)・分析の視点(医療保険者/社会的視点)・時間的地平(例:生涯コホート)を明確にする。HTAガイドラインが存在する場合はそれに従う。
  2. 費用データの収集
    医療費(薬剤費・入院費・外来費)、患者の直接非医療費、間接費(労働損失)を分析視点に応じて収集する。費用には将来費用も含め、割引率を適用する。
  3. 効用値(utility value)の特定
    EQ-5D-5L等の標準尺度を用いた既存研究から各健康状態の効用値を取得するか、新規計測を行う。使用するタリフ(日本タリフ/英国タリフ等)を明示する。
  4. QALYの算出
    各健康状態の効用値に滞在期間を掛け、介入群と対照群のQALYを推計する。モデルベース(マルコフモデル等)か個人データ分析かを明示する。
  5. ICERの算出
    ICER = (介入群の費用 − 対照群の費用) ÷ (介入群のQALY − 対照群のQALY)。割引後の費用・QALYを用いる。ICERを費用対効果平面にプロットする。
  6. 不確実性分析
    モデルと利用目的に応じ、値を変える感度分析や確率的感度分析で不確実性を示す。確率的分析では分布とパラメータ間の依存を説明する。
  7. 閾値判断と文脈的解釈
    提出先や意思決定制度に適用される最新の指針を確認し、ICERと併せて他の便益、費用、分配や不確実性を検討する。この解説では特定制度の採用閾値を共通の基準として定めない。

長所と限界

長所

  • QALYという単一指標で異なる疾患・介入を横断比較でき、医療予算全体の優先順位付けが可能
  • 健康の「質」と「量(生存年)」の両方を統合した指標であり、単純な生存延長だけを評価する誤りを防ぐ
  • 健康の便益をQALYという共通単位で整理できる。提出への適合は国・制度・目的別の指針を確認する。
  • 確率的感度分析(PSA)により不確実性を体系的に定量化できる

限界

  • 効用値の計測に用いる尺度(EQ-5D・SF-6D等)とタリフ(国別選好重み)の選択によりQALYが大きく変わり、分析結果の再現性に課題がある
  • QALYの合計だけでは健康便益の分配や公平性を表しきれず、対象集団への影響を補って判断する必要がある
  • 稀少疾患では効果データ・効用値データが乏しく、外挿・推定に大きな不確実性が伴う
  • 健康状態の測定と価値付けは別の過程であり、誰の回答・選好で効用値を得たかを明示する必要がある

⚠ よくある落とし穴

  • タリフの選択を軽視するケース — 同一患者データにUKタリフと日本タリフを適用するだけでICERが大幅に変わることがある。提出先の規制当局が指定するタリフを必ず確認する
  • 時間範囲が重要な将来費用・便益を落としていないか確認する。生涯の範囲を機械的に選ばず、介入間の差を捉えられる期間と外挿の根拠を示す。
  • 単一のICERだけで採否を断定しない。値・モデル・時間範囲の不確実性を分析し、適用指針が求める方法と残る限界を説明する。

適用条件と根拠

  • QALYは期間と健康関連の効用を組み合わせた値で、尺度や価値付けの違いに注意して比較します。 [1]
  • 効用値を一律に0〜1へ制限しません。EQ-5D-5Lの価値セットは負値を含み得ますが、健康状態への選好値であり人の価値を表す数値ではありません。 [2]
仮想例・実績ではありません

一年間の健康状態を用いて算式を確認する

説明用の仮想例です。全員が1年生存し、効用が一年中一定と仮定した1人あたりの仮想計算です。実在治療の推奨ではありません。

案費用効用×年数QALY
A10万円0.6×10.6
B12万円0.7×10.7
B対A2万円増0.1 QALY増ICER=20万円/QALY

この例から判断できること

20,000円÷0.1=200,000円/QALYです。効用は計算用仮定で、実在の尺度から得た値ではありません。制度の採択閾値や長期の健康影響は別に検討します。

判断で間違えやすいこと

満足度70点を効用0.7に読み替える

見直し方: 検証された尺度と対象制度に合う価値付けを使う

理由: 満足度点数と健康効用は同じ尺度ではないためです。

ICERが低いので予算への影響も小さいとする

見直し方: 対象人数を含む予算影響を別に見積もる

理由: 一単位の費用対効果と総支出は異なるためです。

参照資料と確認箇所

  1. NICE technology appraisal and highly specialised technologies guidance: Economic evaluation
    National Institute for Health and Care Excellence
    参照箇所
    4.2.14–4.2.16 / 4.3.1–4.3.5
    本文との対応
    QALYは期間と健康関連の効用を組み合わせた値で、尺度や価値付けの違いに注意して比較します。
    資料確認日: (AI照合を含む)
  2. eq5d5l: A command to estimate preference-based values(EuroQol Working Paper Series 19001)
    Juan M. Ramos-Goñi/Jesús Oramas-Zarate/Oliver Rivero-Arias · 2019
    参照箇所
    1 Description(印刷p.2)
    本文との対応
    効用値の範囲と、元フォームの0〜1表記に関する記入例の留意点
    資料確認日: (AI照合を含む)

このページの引用情報

評価コンパス編集.「費用効用分析」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/cua/
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更新履歴
  • — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。 入力欄の位置・型・個数を保ち、フォームの固定条件や閾値の表記を修正。