ひと目でわかる仕組み
- 研究設問と専門家パネルの設計
- ラウンド1:開放型質問(探索フェーズ)
- ラウンド2:評価・順位付け
- ラウンド3以降:収束に向けた反復
- 最終集計と結果の解釈
- パネルへのフィードバックと報告
使う場面
- 地理的・時間的に分散した専門家パネルからコンセンサスを得たい場合
- 評価指標・判断基準の妥当性について専門家の見解をシステマティックに集約したい
- 対面グループ討議が難しい状況での構造化された意見集約
- 政策・事業の優先課題について、特定の権威者に左右されない客観的な専門家合意を形成したい
向かない場面
- 必要な反復とフィードバックの時間を確保できない場合。
- 代表的な人口割合や実際の因果効果を、パネル内の合意だけで推定しようとする場合。
参加者・体制と成果物
問いに必要な専門性や経験を持つパネルと調査管理者。人数は必要な視点と実施条件から決め、参加者間・管理者に対する匿名性の範囲を明示する。
主な成果物
- ラウンドごとの集計結果(中央値・四分位範囲)
- 合意された指標/基準リスト
- 収束プロセスの記録
- 少数意見の記録
実施手順
- 研究設問と専門家パネルの設計答えたい問いと必要な経験・専門性を定めてパネルを選ぶ。人数は多様性、分析計画、離脱の見込みから決め、匿名性の範囲と合意・終了条件を事前に説明する。
- ラウンド1:開放型質問(探索フェーズ)開放型の質問でパネルから広範なアイデア・見解を収集する。回答を整理・集計し、類似項目を統合してラウンド2の構造化アンケートを作成する。
- ラウンド2:評価・順位付けラウンド1の集計結果をパネル全員にフィードバックし、各項目の重要性・同意度をリッカートスケール等で評価させる。中央値・四分位範囲を算出する。
- ラウンド3以降:収束に向けた反復統計的な分布と匿名化した理由を返し、回答者が再考できるようにする。事前に定めた合意条件、安定性、最大ラウンド数などの終了条件を適用し、少数意見や離脱状況も残す。
- 最終集計と結果の解釈最終ラウンドの統計量(中央値・四分位範囲・合意のレベル)を集計し、結果を解釈する。合意に至らなかった項目についても記録し、その意義を考察する。
- パネルへのフィードバックと報告最終結果をパネルに共有し、貢献に謝意を示す。合意された指標・基準を評価設計・報告に組み込む。
長所と限界
長所
- 匿名性により権威・地位・声の大きさの影響を抑えやすい。パネル構成やフィードバックによる偏りは別に点検する
- 地理的に分散した専門家から系統的に意見を収集できる
- 反復フィードバックにより個人の孤立した判断よりも質の高い集合知が得られる
- 評価指標・基準の妥当性をエビデンスベースで示せる
限界
- 「専門家の合意」は真実や最良の解答を保証しない — パネル構成の偏りに注意
- 複数ラウンドで時間がかかり、参加者の脱落(回答率低下)が問題になりやすい
- 収束を強調しすぎると、重要な少数意見が埋もれるリスクがある
⚠ よくある落とし穴
- 「専門家」の定義が曖昧なまま選定すると、特定の利害・立場に偏ったパネルになる — 選定基準を明文化する
- ラウンド間の回答率が下がりデータの代表性が失われる — 参加者への定期的な連絡・謝礼の仕組みが必要
- フィードバックで中央値だけ示し、少数意見の理由を伝えないと、多数派への同調が過度に起きる
適用条件と根拠
相談支援の指標候補をパネルで検討する
以下は説明用の仮想例です。実務者・利用経験者からなる8人が、候補指標の重要度を1~5で評定します。
| 項目番号 | 質問・指標項目の内容 | 中央値 | 四分位範囲(Q1–Q3) | 合意水準(高/中/低) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 本人が希望する支援に接続できた割合 | 4 | 4~4.5 | 高:本例の事前基準「中央値4以上かつIQR1以下」を満たす |
この例から判断できること
本例は8人全員が回答し、評点[4,4,4,4,4,4,5,5]なら中央値4、Q1=4、Q3=4.5です。四分位の算法は上下半分の中央値と定義しています。
判断で間違えやすいこと
平均が高いので専門的に正しい指標と断定する
見直し方: パネルの構成と合意の範囲、異論を併記する
理由: 合意は妥当性の自動的な証明ではないためです。
反対者が離脱して意見がそろったことを収束とする
見直し方: 継続回答者と離脱状況を分けて確認する
理由: 参加者の変化だけで一致が増えることがあるためです。
参照資料と確認箇所
- RAND Methodological Guidance for Conducting and Critically Appraising Delphi PanelsDmitry Khodyakov, Sean Grant, Jack Kroger, Melissa Bauman / RAND · 2023
- 参照箇所
- Chapter 2: What Delphi Is; Chapter 3: Level of Anonymity, Stopping Criteria; Chapter 5: Consensus; p.37 Panelist Flow and Attrition Across Rounds; p.47 DCAT item 8
- 本文との対応
- 匿名性の範囲と終了条件を募集前に設計し、回答の集約と理由を次のラウンドへ返します。 各回の参加率と分母、離脱状況、最終パネルの十分性を説明します。
このページの引用情報
評価コンパス編集.「デルファイ法」. 評価コンパス, 2026-10-07更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/delphi/
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更新履歴
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- — 限定追調査FW-U01〜U05に基づき、分析方式・記録期限・人数の適用範囲と、回答率チェックの前提を明確化。既存入力欄は維持し、数値目安自体を誤りと断定していない。

