参加型・質的アプローチ専門家合意予測政策評価指標開発繰り返し調査
デルファイ法
Delphi Method
別名: デルファイ技法、専門家パネル法
匿名の専門家パネルへの反復アンケートによって見解を収束させる構造化手法。評価では指標開発、評価基準の合意形成、政策課題の優先順位づけに活用される。
難易度 中級 ●●●費用 中 ●●●期間 2〜4ラウンド×2〜4週間/ラウンド(合計1〜3ヶ月)
概要
デルファイ法は1950〜60年代にRAND研究所(Dalkey & Helmer)が開発した構造化されたグループ意思決定・予測手法。匿名性・反復・統制されたフィードバック・統計的集計という4つの原則が特徴。
プロセスは以下の通り:(1)専門家パネルを選定し、開放型質問でラウンド1を実施、(2)回答を集計・要約しラウンド2として全員にフィードバック、(3)参加者は前回の集計結果を参照しながら自己の意見を修正・維持、(4)見解が収束するまで繰り返す(通常2〜4ラウンド)。
匿名性の担保により、権威や声の大きさによる意見への影響を排除する点がグループインタビュー等との根本的な違い。評価の文脈では、測定指標の妥当性検証、評価基準(ルーブリック)の開発、評価クエスチョンの優先順位付け、複数機関が合意すべき基準策定などに活用される。
✓ こんな時に使う
- 地理的・時間的に分散した専門家パネルからコンセンサスを得たい場合
- 評価指標・判断基準の妥当性について専門家の見解をシステマティックに集約したい
- 対面グループ討議が難しい状況での構造化された意見集約
- 政策・事業の優先課題について、特定の権威者に左右されない客観的な専門家合意を形成したい
✕ 向かない場面
- 急を要する意思決定が必要な場合(複数ラウンドに数週間〜数ヶ月かかる)
- 専門家ではなくコミュニティ/受益者の視点・経験を収集したい場合 — 参加型の別手法が適切
実施手順
- 研究設問と専門家パネルの設計デルファイで答える設問を明確にする(例: 「この事業の評価に最も重要な指標はどれか」)。専門家パネルを選定する(通常10〜30名)。匿名性の確保・参加へのインセンティブ・回答率の維持方法を計画する。
- ラウンド1:開放型質問(探索フェーズ)開放型の質問でパネルから広範なアイデア・見解を収集する。回答を整理・集計し、類似項目を統合してラウンド2の構造化アンケートを作成する。
- ラウンド2:評価・順位付けラウンド1の集計結果をパネル全員にフィードバックし、各項目の重要性・同意度をリッカートスケール等で評価させる。中央値・四分位範囲を算出する。
- ラウンド3以降:収束に向けた反復前ラウンドの統計的結果(グループの中央値と自己の回答の差)をフィードバックする。パネルは自己の回答を再考し修正するか、異なる場合は理由を記述する。四分位範囲が収束したら終了。
- 最終集計と結果の解釈最終ラウンドの統計量(中央値・四分位範囲・合意のレベル)を集計し、結果を解釈する。合意に至らなかった項目についても記録し、その意義を考察する。
- パネルへのフィードバックと報告最終結果をパネルに共有し、貢献に謝意を示す。合意された指標・基準を評価設計・報告に組み込む。
長所と限界
長所
- 匿名性により権威・地位・声の大きさによるバイアスを排除できる
- 地理的に分散した専門家から系統的に意見を収集できる
- 反復フィードバックにより個人の孤立した判断よりも質の高い集合知が得られる
- 評価指標・基準の妥当性をエビデンスベースで示せる
限界
- 「専門家の合意」は真実や最良の解答を保証しない — パネル構成の偏りに注意
- 複数ラウンドで時間がかかり、参加者の脱落(回答率低下)が問題になりやすい
- 収束を強調しすぎると、重要な少数意見が埋もれるリスクがある
⚠ よくある落とし穴
- 「専門家」の定義が曖昧なまま選定すると、特定の利害・立場に偏ったパネルになる — 選定基準を明文化する
- ラウンド間の回答率が下がりデータの代表性が失われる — 参加者への定期的な連絡・謝礼の仕組みが必要
- フィードバックで中央値だけ示し、少数意見の理由を伝えないと、多数派への同調が過度に起きる