参加型・質的アプローチグループ合意優先順位アイデア出し構造化討議参加型
名目集団法
Nominal Group Technique
別名: NGT、名義集団法
個人発想→ラウンドロビン共有→クラリフィケーション→投票という構造化プロセスで、声の大きさや地位によるバイアスを防ぎながら多様な意見から優先順位を合意する手法。
難易度 初級 ●●●費用 低 ●●●期間 1〜3時間(グループ1セッション)
概要
名目集団法(NGT)は、Andre Delbecq、Andrew Van de Ven、David Gustafson が1971年に開発した構造化グループ意思決定手法。「名目(nominal)」とは「名ばかりの集団」を意味し、最初は各自が黙って個別にアイデアを出す(実質的には個人作業)ことで、社会的影響を排除する。
通常のブレインストーミングや集団討議では、声の大きな人・上位職の人・最初に発言した人の意見が不当に影響しやすい。NGTはラウンドロビン形式(全員が順番に1アイデアずつ発表)と匿名投票により、このバイアスを構造的に抑制する。
評価の文脈では、評価クエスチョンの優先付け、評価基準の合意、ステークホルダーの関心事項の特定、改善提案の優先順位決定などに広く使われる。フォーカスグループとは異なり、グループダイナミクスへの依存を最小化した「平等な発言機会」が特徴。
✓ こんな時に使う
- 多様な立場・地位の参加者が対等に意見を出し合える場を設計したい
- 評価クエスチョン・評価基準・改善提案を短時間でグループ合意したい
- ブレインストーミングで声の大きい人に支配されることを防ぎたい
- 匿名投票で客観的な優先順位を決定したい
✕ 向かない場面
- 自由な発想の拡散や深い探索的対話が目的の場合 — オープンな対話手法の方が向く
- 5名以下(少人数すぎるとNGTの効果が限定的)または15名以上(ラウンドロビンが長時間化)のグループ
実施手順
- 設問の設定と参加者への説明「あなたが最も重要と考えるものは何か」という中心設問を具体的に設定する(例: 「この事業評価で最優先すべき評価クエスチョンは何か」)。ファシリテーターがプロセスを説明し、全員が安心して発言できる雰囲気を作る。
- 個別のサイレント発想(5〜10分)全員が黙って、設問に対するアイデアを各自で書き出す。他者の影響を受けず個人のアイデアを最大化する最重要フェーズ。ファシリテーターは発言・会話を禁止する。
- ラウンドロビン共有参加者が1人ずつ順番に1アイデアを発表し、ファシリテーターがフリップチャートに記録する。全員のアイデアが出尽くすまでラウンドを繰り返す。この段階では議論・批判・質問は禁止。
- クラリフィケーション(明確化)リストに上がった全アイデアについて、意味の確認・重複の統合を行う。この段階で初めて発言者が補足説明をし、他者が質問できる。議論は許容するが批判は控える。
- 個別投票と集計各参加者が最も重要と考えるアイデアを5〜8項目選び、順位点数(例: 5点〜1点)を付けてカードに記入する(匿名)。ファシリテーターが集計し、上位項目を発表する。
- 結果の議論と最終合意集計結果に対して最終的な議論・調整を行い、グループの優先順位を確定する。予想外の結果(期待に反した上位・下位項目)に注目することで重要な気づきが生まれることがある。
長所と限界
長所
- 全員に平等な発言機会が保証され、声の大きさ・地位による偏りを防げる
- サイレント発想フェーズにより、他者に影響されない独自のアイデアが引き出せる
- 1〜3時間で優先順位合意まで到達できる効率性
- シンプルなプロセスで高い信頼性の結果が得られる
限界
- グループ間の相互学習・深い対話・視点の統合には弱い
- 「リストにないもの」が生まれにくく、発散的創造には向かない
- 投票結果が必ずしも最良の答えを指すわけではない
⚠ よくある落とし穴
- サイレント発想フェーズを省略して「最初から挙手で発表」にすると、NGTの最大のメリットが失われる
- ラウンドロビンで「他の人と同じです」と言わせると平等性が崩れる — パスのルールを明確にする
- 投票後に「やはり変えたい」という修正圧力が上位者からかかる場合があるため、匿名集計を徹底する