設計・セオリー評価設計事前診断評価準備フィージビリティ評価計画

評価可能性アセスメント

Evaluability Assessment
別名: EA、評価可能性調査

本格評価を実施する前に、評価が実際に可能か・意味があるかを診断する事前アセスメント。ジョセフ・ウォーリー(Joseph Wholey)が1979年に体系化した、評価投資の無駄を防ぐ実務的手法。

難易度 中級 ●●費用 ●●期間 1〜4週間(文書レビュー+インタビューを含む)

概要

評価可能性アセスメント(Evaluability Assessment: EA)は、ジョセフ・ウォーリー(Joseph Wholey)が1979年に著書『Evaluation: Promise and Performance』で体系化した手法で、「評価を始める前に、この事業は評価できる状態にあるか」を診断することを目的とする。米国連邦政府のプログラム評価の実務から生まれた発想で、「評価するだけの価値があるか(evaluability)」と「評価できる状態にあるか(feasibility)」の両面を点検する。

EA では、事業の目標が明確に定義されているか、測定可能な指標が存在するか、データへのアクセスが可能か、評価結果を活用する意思決定者の関心があるか、といった条件を体系的にチェックする。EA の結果、事業の目標設定や指標が不十分と判明した場合は、本格評価の前にプログラムの改善(program clarification)を勧めることもある。評価資源の効率的な配分と、活用されない評価レポートを生産するリスクの低減が主要な価値である。

✓ こんな時に使う

  • 評価予算・人員が限られており、複数の候補事業の中から評価対象を優先順位づけしたいとき
  • 新規に評価を受託した際に、事業の目標・指標・データの整備状況を素早く把握したいとき
  • 過去に評価が実施されたが活用されなかった事業で、再評価の実現可能性と有用性を確認したいとき
  • 評価コミッショナー(依頼者)が「何を評価すべきか」を明確にできていない段階

✕ 向かない場面

  • 事業の目標・指標が既に整備され、評価の必要性も明確な場合 — すぐに評価設計に進める
  • 緊急性の高い短期的なプロセス評価や形成的評価 — EA を経る時間的余裕がない
  • 事業規模が小さく、評価可能性の確認より実施の方がコストが低い場合

実施手順

  1. 文書レビュー
    事業の計画書・ロジックモデル・既存の評価報告書・モニタリングデータ等を収集・分析し、目標の明確度と既存データの状況を把握する。
  2. キーインフォーマント・インタビュー
    事業担当者・管理者・主要ステークホルダーにインタビューし、事業目標の共通理解と評価への期待・関心・活用意図を確認する。
  3. 目標・指標の明確性評価
    事業目標が SMART 基準を満たしているか、測定可能な指標が設定されているかを評価する。目標が曖昧な場合は「目標の再定義」を推奨。
  4. データ・アクセスの実現可能性確認
    評価に必要なデータが存在するか、アクセス可能か、信頼性はあるかをチェックする。基礎データが欠如していれば、まずベースライン収集が必要。
  5. 評価活用意図の確認
    評価結果を誰がどのように使う予定かを確認する。活用の見通しがなければ、評価投資の正当化が困難。意思決定者の関与を事前に確保する。
  6. EA 報告書の作成と勧告
    評価可能性スコアと課題、推奨される評価アプローチ(または評価前の準備事項)を報告書にまとめる。「今すぐ評価可能」「条件付きで可能」「まず整備が先」の結論を出す。

長所と限界

長所

  • 評価資源の無駄遣いを防ぎ、実施可能で活用される評価に集中できる
  • 事業の目標・指標の曖昧さを早期に発見し、改善を促す副次的効果がある
  • 評価コミッショナーと評価チームの期待値のすり合わせが早期にできる

限界

  • EA 自体にも時間とコストがかかるため、評価予算の小さな事業では割に合わないことがある
  • 「評価できない」という結論が、評価回避の口実に使われるリスクがある
  • EA 実施者の主観的判断が結論に影響しやすく、基準の標準化が難しい

⚠ よくある落とし穴

  • EA を「評価を断るための手続き」として使い、説明責任から逃れるための文書化になる
  • 文書レビューだけで完結させ、現場スタッフや受益者への聴取を省略する
  • EA 報告書を作成して終わり、勧告事項が実際の評価設計に反映されない