データ収集質的調査半構造化ラポール逐語録深掘り

インタビュー

Interview
別名: 面接調査、ヒアリング、個人インタビュー

調査者と回答者の対話を通じて、経験・認識・意味づけなど量的調査では捉えにくい深い情報を得る質的データ収集の中心的手法。構造化・半構造化・非構造化の三形式を目的に応じて使い分ける。

難易度 中級 ●●費用 ●●期間 準備1〜2週間、実施(1回45〜90分)×対象人数、分析2〜4週間

概要

インタビューは、調査者(インタビュアー)と回答者(インタビュイー)の対話を通じてデータを収集する質的研究の基幹的手法。社会学・人類学・臨床心理学における長い実践的蓄積を持ち、評価の文脈でも「なぜ成果が出たか・出なかったか」「関係者はどのようにプログラムを経験したか」を探るために広く使われる。

形式は三種類ある。構造化インタビューは全員に同一の質問を同じ順序で問い、量的比較を可能にする。半構造化インタビューはガイドラインを持ちながら回答に応じてフォローアップ質問を行う最も一般的な形式。非構造化インタビューは会話的な対話で、新規性の高いテーマの探索的調査に適する。評価実務では半構造化が主流であり、利害関係者の経験・プロセスの実態・予期しない成果の発見に強みを発揮する。データの質はラポール(信頼関係)の構築と、逐語録作成・コーディングという分析プロセスの厳密さに依存する。

✓ こんな時に使う

  • 事業の実施プロセス・受益者の経験・変化の文脈を深く理解したい
  • 量的調査の結果では説明がつかない「なぜ」を探りたい
  • ステークホルダーの多様な視点・利害対立を把握したい
  • センシティブなテーマ(被害経験・職場の問題など)で対面の関係性が必要な場合

✕ 向かない場面

  • 100名以上の大規模な量的把握が目的の場合 — 調査票が効率的
  • インタビュアーの技量が確保できない場合 — 誘導質問や不十分な掘り下げでデータが歪む
  • 対象者の時間的負担が難しい場面(多忙な管理職・クライシス下の受益者等)

実施手順

  1. インタビューの目的と形式の決定
    評価クエスチョンに照らし、構造化・半構造化・非構造化のどれが適切かを決める。比較可能性が重要なら構造化、文脈の深掘りが目的なら半構造化を選ぶ。
  2. インタビューガイドの作成
    質問を「大質問(Main questions)→プローブ(Probes)→チェック質問」の階層で整理する。主要質問は5〜8程度に絞り、誘導・クローズド質問を避け、「どのように」「あなたにとってどういう意味が」などオープンな問い方にする。
  3. 対象者の選定と同意取得
    評価目的に応じた意図的サンプリング(最大多様性・典型的事例・批判的事例など)を行う。インフォームドコンセント文書を用意し、録音・録画の同意を書面で取得する。
  4. ラポール構築と実施
    開始時にインタビューの目的・匿名性・中断の権利を説明し、緊張を解くアイスブレイクを行う。傾聴・沈黙の活用・言い換え確認(パラフレーズ)・感情に配慮したフォローアップで深掘りする。
  5. 記録と逐語録の作成
    録音(同意あり)と同時に手書きメモを取る。録音は72時間以内に逐語録を作成するのが原則。重要な非言語情報(表情・沈黙・感情的な変化)をフィールドノートに記録する。
  6. メンバーチェックと追加確認
    重要な発言・解釈について対象者に確認(メンバーチェック)し、誤解や取り違えを修正する。追加質問が必要な場合は了解のうえ実施する。
  7. コーディングと主題分析
    逐語録を評価クエスチョンに沿ってコーディング(テーマ別分類)し、主題分析(Thematic Analysis)または内容分析(Content Analysis)を行う。複数の調査者でコーディングし、一致率を確認する。

長所と限界

長所

  • 量的調査では捉えられない経験・意味・プロセスの文脈を深く把握できる
  • 対象者の言葉・表現そのものが一次データになり、報告書での引用に強い
  • 予期していなかった成果や問題を発見する探索的能力が高い
  • フレキシブルな対話で回答の理解度確認・誤解の修正ができる

限界

  • 時間とコストがかかるため、大人数への適用が難しい
  • インタビュアーのスキルと対象者との関係性によってデータの質が大きく変わる
  • 分析が主観的になりやすく、再現性の担保には構造的なコーディング手続きが必要
  • 回答者が社会的望ましさの方向に回答を調整するバイアス(Social Desirability Bias)が生じやすい

⚠ よくある落とし穴

  • 誘導質問(「〜だったんじゃないですか?」)でインタビュアーが答えを誘導してしまう — ガイドをオープン質問で設計し、複数名でレビューする
  • インタビュー中にメモを取ることに集中して、傾聴・フォローアップが疎かになる — 録音を活用し、手書きメモは最小限にする
  • データ量の多さに圧倒され「印象に残った発言の切り張り」で終わる — コーディングの手続きを事前に設計し、逐語録全体を分析する