評価の実務ガイド

混合研究法とは?量的・質的データを組み合わせる評価の進め方

混合研究法の意味、量的調査と質的調査の役割分担、統合の手順、実務での設計例と注意点を解説します。

量と質の結果を合わせて解釈する

両方の結果を並べるだけで終えず、一致する点も食い違う点も検討します。 本文で詳しく読む

まず結論

混合研究法とは、量的データと質的データを計画的に組み合わせ、一つの評価クエスチョンに多面的に答える方法です。量的調査で変化の広がりや傾向を捉え、インタビューや観察で理由・過程・例外を理解し、最後に両方の結果を統合して解釈します。 [1]

参加者の80%が満足したという数字だけでは、誰がなぜ満足しなかったのかは分かりません。反対に、数人の印象的な語りだけでは、その経験がどれほど広がっているのかは分かりません。

混合研究法は、数字と語りを単に並べる方法ではありません。どの問いにどちらのデータが必要かを先に決め、結果が一致する点と食い違う点を統合して判断する方法です。

量と質の証拠を合わせて読む

それぞれの役割と組み合わせ方を選び、結果の一致と不一致を検討します。

量的データと質的データの役割

量的データは、何人に起きたか、どの程度変化したか、属性や時期で差があるかを示すのに向きます。質問紙、利用記録、テスト、行政統計などが代表例です。

質的データは、経験の意味や変化の過程、文脈、想定外の影響を掘り下げるために使えます。因果の理由が語られたからといって、その説明が自動的に確定するわけではありません。量的データも、単に数にしただけで集団を代表するわけではありません。

量的データと質的データの役割
知りたいこと主に使うデータ例
変化の広がり量的データ行動が変わった人の割合
変化の理由質的データ行動を変えたきっかけや障害
属性別の違い量的データ参加経路別の利用継続率
想定外の影響質的データ自由記述やインタビューの具体例
総合判断両方を統合数字と語りが示す改善課題
[1]

使いやすい三つの組み合わせ方

同時並行型は、アンケートとインタビューを近い時期に行い、結果を並べて比較する方法です。説明逐次型は、まず数字の傾向を把握し、その理由をインタビューで掘り下げます。探索逐次型は、先にインタビューで論点を見つけ、その後にアンケートで広がりを確かめます。

どの型を選ぶかは、最初に分かっていることと、時間・予算・対象者への負担で決めます。大切なのは、後から都合よく二つの結果をつなげるのではなく、統合する場面を設計に組み込むことです。

この三つが全てではなく、実験の中に質的調査を組み込むなどの設計もあります。問いに対して、なぜ両方が必要かを説明できることを優先します。

  • 同時並行型: 数字と語りを同時に集めて見比べる
  • 説明逐次型: 数字の傾向を、後から語りで説明する
  • 探索逐次型: 語りから論点を見つけ、後から数字で確かめる
[1]

設計から統合までの手順

まず、評価クエスチョンごとに、量的・質的のどちらが必要かを決めます。次に、同じ対象者を扱うのか、別の対象者から補完的に聞くのか、どの時点で結果を統合するのかを設計します。

分析後は、結果を一つの表に置きます。たとえば、アンケートで見えた参加継続率を左に、インタビューで分かった継続の理由と障害を右に置き、両方を踏まえた解釈と改善案を中央に書きます。

  1. 評価クエスチョンを量的・質的の観点に分ける
  2. 各データの対象、時期、収集方法を決める
  3. 結果をどの場面で統合するか決める
  4. 量的・質的データをそれぞれ分析する
  5. 一致・不一致・補完関係を比較する
  6. 統合した解釈を提言と限界に結び付ける
実務上の整理・提案

不一致は失敗ではなく発見

アンケートでは満足度が高いのに、インタビューでは利用上の困りごとが語られることがあります。これはどちらかが間違いとは限りません。平均値に表れない少数者の経験、回答しにくい不満、利用段階ごとの違いを示している可能性があります。

不一致を消そうとせず、対象者の違い、質問の意味、調査時点、データの限界を点検します。その上で、どの利用者にどの改善が必要かという、より具体的な判断に進めます。

  • 結果が一致しても、同じ対象や同じ回答傾向に依存していないか確認する
  • 結果が食い違う点は、追加で確かめる論点になる
  • 片方のデータだけで全体を断定しない
  • 統合の過程と限界を報告に残す
  • 対象者への負担と個人情報保護を両方で確認する
[2]
仮想例・実績ではありません

継続率と利用者の経験を統合する

説明用の仮想例です。相談サービスの継続利用を改善するため、記録と任意のインタビューを照合します。

量的な観察質的な観察(架空)統合した判断
平日昼の利用者で継続が少ない仕事との調整が難しいとの語り内容だけでなく時間帯の制約を追加確認
満足度は高い相談相手には感謝しているが手続きが進まない体験への評価と行動の成果を別に判断
一部の利用者は継続同僚の紹介で日程を調整できた利用を支える条件として調べる

この例から判断できること

数字の対象と聞き取りの対象が同じ範囲かを確認します。不一致を消さず、追加確認が必要な仮説として残します。

判断で間違えやすいこと

アンケートとインタビューを別々に掲載して終える

見直し方: 問いごとに両方の結果と統合した解釈を並べる

理由: 二つの結果が判断にどう関わるかを示すためです。

一致したので結論は確実とする

見直し方: 共通の偏りと、反対の事例の有無を確認する

理由: 同じ人の自己報告を繰り返しただけの可能性があるためです。

次に手を動かす

混合研究法シートで問いごとの統合時点と比較方法を決める

よくある質問

混合研究法は大規模な調査でないと使えませんか?

いいえ。小規模事業でも、短いアンケートに数件のインタビューを組み合わせるなど、目的と負担に合わせて実施できます。

量的データと質的データの結果が違う場合はどうしますか?

どちらかを捨てるのではなく、対象者、時期、質問の意味、回答しにくさなどを確認します。不一致自体が重要な発見になることがあります。

二つの調査を行えば混合研究法になりますか?

必ずしもなりません。両方のデータを同じ評価クエスチョンに結び付け、統合して解釈する設計が必要です。

参照資料と確認箇所

  1. Best Practices for Mixed Methods Research in the Health Sciences
    John W. Creswell / Ann Carroll Klassen / Vicki L. Plano Clark / Katherine Clegg Smith(NIH OBSSR) · 2011
    参照箇所
    The Nature and Design of Mixed Methods Research(本文 pp.4–9)
    本文との対応
    量的・質的研究の意図的統合、並行型と逐次型の設計
    資料確認日: (AI照合を含む)
  2. Quality in qualitative evaluation (QQE)
    HM Treasury / Evaluation Task Force
    参照箇所
    4. The framework(Sample 7–8 / Analysis 12 / Reporting 14 / Ethics 17)
    本文との対応
    対象選定理由、異なる見方と否定事例、解釈への道筋、同意と秘密保持
    資料確認日: (AI照合を含む)
内容更新: 資料確認日: (AI照合を含む)人の監修記録なし説明用の仮想例あり編集方針・確認範囲このページを引用訂正したい箇所を伝える

このページの引用情報

評価コンパス編集.「混合研究法とは?量的・質的データを組み合わせる評価の進め方」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/guides/mixed-methods/
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更新履歴
  • — 方法の原典と実務上の整理を区別し、固有の仮想例・判断例・次の行動を追加。分類や測定条件の断定を見直し。