ひと目でわかる仕組み
- 必要な文書の特定と収集計画の策定
- レビューフレームの設計
- 文書の収集とアクセス確保
- 文書の品質評価
- 体系的なレビューと情報の抽出
- 情報の統合と分析
使う場面
- 事業の実施経緯・意思決定の過程を時系列で再構成したい
- 参加者数・実施回数・予算執行など定量的な実績データを把握したい
- インタビューや調査票実施の前に背景知識を整理したい
- 過去の評価・監査報告の内容を確認し、改善状況を検証したい
向かない場面
- 関係者の認識・態度・感情など、文書に記録されていない情報が評価の中心の場合 — インタビューやFGDを用いる
- 文書の保存・管理が不十分で信頼性の低い記録しかない場合 — データの限界を率直に報告する
- リアルタイムの実施状況を把握したい場合 — 観察法が適切
参加者・体制と成果物
文書の選定・レビュー担当と必要に応じた対象分野の担当者。資料量や機密性に応じて役割を分け、判断が難しい資料を照合する。
主な成果物
- 文書収集リスト(文書台帳)
- レビューシート(文書別情報抽出記録)
- 文書レビュー統合サマリー
実施手順
- 必要な文書の特定と収集計画の策定評価クエスチョンごとに「どの文書から何の情報が得られるか」をマッピングする。収集対象の文書の種類・所在・アクセス手続き・形式(紙・電子)を一覧化し、収集の優先順位を決める。
- レビューフレームの設計「何を読み取るか」を定めたレビューフレーム(抽出する情報の種類・評価の視点・記録フォーマット)を設計する。評価クエスチョン別に抽出項目を設定し、証拠の質の判断基準(一次文書 vs 二次文書、公式 vs 非公式)を明確にする。
- 文書の収集とアクセス確保組織の情報管理担当者に依頼し、必要な権限を確認する。機密文書の取り扱い手続き(閲覧場所・複写の可否・開示制限)を遵守する。収集した文書は日付・種類・出所の記録を残す。
- 文書の品質評価各文書について、作成者・作成目的・作成日時・原本性(コピーか原本か)を確認する。文書の目的(対外的な好印象のための文書か、内部管理のための正確な記録か)を考慮してバイアスを評価する。
- 体系的なレビューと情報の抽出レビューフレームに沿って文書を読み、関連情報を抽出・要約する。文書ごとにレビューシートを作成し、証拠の出所(文書名・ページ)を記録する。矛盾する情報が文書間で見つかった場合は両方を記録し、差異の理由を探る。
- 情報の統合と分析複数の文書から抽出した情報を評価クエスチョン別に統合する。単一文書の情報は他の証拠(インタビュー・観察)と照合して三角測量(Triangulation)を行う。文書に記録されていないこと(空白)も証拠として注目する。
長所と限界
長所
- 追加的なフィールド調査なしに事業の実績・経緯・意思決定を再構成できる
- 費用が低く、時間も相対的に短い
- 過去の出来事・変化の軌跡を遡及的に把握できる
- 現存する文書が客観的な証拠として機能する
限界
- 文書に記録されていることしか分からない — 暗黙知・非公式プロセスは見えない
- 文書が不完全・偏向・加工されている可能性があり、批判的な読み方が必要
- 大量の文書のレビューは時間を要し、情報過多になる危険性がある
- プライバシー・機密性の制約でアクセスできない文書がある
⚠ よくある落とし穴
- 好意的な文書(成功報告書)だけを収集し、批判的な記録(苦情・内部反省メモ)を見落とす — レビュー計画に多様な文書種類を含める
- 文書の記述をそのまま「事実」として引用する — 作成者の目的・立場を踏まえた批判的読解が必要
- 分析フレームなしに読み始め、大量の文書に埋もれる — レビューフレームを先に確定してから収集・分析を始める
適用条件と根拠
- 入手した文書、選定・抽出方法、欠落や作成後の変化を記録します。 [1]
計画した研修が変更された理由を追う
説明用の仮想例です。計画書と実施報告書、会議メモを照合する仮想例です。
| 文書 | 記載 | 評価での扱い |
|---|---|---|
| 計画書v1 | 対面研修を4回実施 | 当初計画 |
| 実施報告 | 対面2回・オンライン1回 | 実施記録。参加者の受講状況は別記 |
| 会議メモ | 会場確保が難しく変更 | 変更理由の記録。他の理由の有無を確認 |
この例から判断できること
実施回数だけから質の低下を決めません。変更の判断経緯、提供時間、参加者の経験を確認します。
判断で間違えやすいこと
最終報告だけを読む
見直し方: 計画・変更記録・実施記録を照合する
理由: 最終報告だけでは変更過程が見えないためです。
記録がないので実施していないと断定する
見直し方: 記録未発見と実施未確認を区別する
理由: 文書の欠落は活動の不存在を証明しないためです。
参照資料と確認箇所
- Existing documentsBetterEvaluation
- 参照箇所
- Types of existing documents / Advice for using this method
- 本文との対応
- 入手した文書、選定・抽出方法、欠落や作成後の変化を記録します。
このページの引用情報
評価コンパス編集.「文書レビュー」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/document-review/
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更新履歴
- — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。

