ひと目でわかる仕組み
- ネットワークの境界とノードの定義
- 関係データの収集
- 隣接行列・エッジリストの作成
- ネットワーク指標の算出
- 可視化と解釈
- 前後比較または準拠点との比較
使う場面
- 連携促進・協働強化を目的とした事業において、関係者間のつながりの変化を可視化・測定したいとき
- コレクティブインパクト・多機関連携プログラムで、全体のネットワーク構造と中心的なコネクターを特定したいとき
- 情報・リソース・支援が特定の組織に集中しており、流通のボトルネックを特定したいとき
- 介入前後のネットワーク構造の比較で、連携強化の成果を可視化したいとき
向かない場面
- 関係データ(誰と誰がどのような関係を持つか)の収集が困難な場面 — ノード間の関係を体系的に把握できなければ分析は成立しない
- ネットワーク構造ではなく個人の態度・行動変容を主アウトカムとする評価 — 通常の調査・介入評価手法が適する
- 関係の定義やネットワーク境界を定められず、収集した関係の範囲を説明できない場合。小集団でもネットワークを記述できる。
参加者・体制と成果物
関係データの収集・分析担当と対象者。境界、関係の定義、共有範囲、同意を確認し、欠損が残る場合は分析への影響を報告する。
主な成果物
- ネットワーク図(ノード中心性・エッジ重みを視覚化)
- ネットワーク指標一覧(密度・平均距離・各ノードの中心性)
- 前後比較レポート(介入によるネットワーク構造変化の解釈)
- 孤立ノード・ブリッジノードの特定リスト
実施手順
- ネットワークの境界とノードの定義誰/何をネットワークのメンバー(ノード)とするか、どの種類の関係(エッジ)を分析するかを決める。「情報交換の関係」「資金提供の関係」「協働事業の関係」など、関係の種類によって結果が異なる。
- 関係データの収集ソシオメトリック調査(誰と誰が関係を持つかを全ノードに問う)、存在する文書・議事録・契約記録の活用、または観察によって関係データを収集する。全ノードからの回答を得る「全体ネットワーク調査」と、一部から関係を把握する「自我中心ネットワーク調査」がある。
- 隣接行列・エッジリストの作成収集した関係データをノード×ノードの隣接行列(Adjacency Matrix)またはエッジリスト形式に整形する。関係の強度(重み付き)や方向性(有向グラフ)の扱いを決める。
- ネットワーク指標の算出Gephi・UCINET・R(igraph)等でネットワーク全体の密度・平均距離・クラスタリング係数と、各ノードの中心性指標(次数・媒介・固有ベクトル)を算出する。孤立ノードや橋渡し役のノードを特定する。
- 可視化と解釈ネットワーク図(ノードの大きさ=中心性、エッジの太さ=関係の強度)を作成する。視覚的パターン(密集したクラスター・ブリッジ・孤立ノード)を評価クエスチョンに照らして解釈する。
- 前後比較または準拠点との比較介入前後のネットワーク指標を比較し、密度の増加・孤立ノードの解消・媒介中心性の分散化等の変化を評価する。「目標とするネットワーク構造」を事前に設定しておくとベンチマーク比較が容易になる。
長所と限界
長所
- 関係の構造を分析し、個々の属性の集計とは異なる視点を得られる
- ネットワーク図により、複雑な関係性のパターンを直感的に把握・コミュニケーションできる
- 介入前後の比較で連携強化の成果を定量的・視覚的に示せるため、連携促進事業の説明責任に有効
- 孤立しているノード・過剰に媒介しているノードを特定でき、介入すべき箇所を示唆できる
限界
- 全体ネットワーク調査は全ノードからの回答が理想だが、未回答ノードがあると構造推定に偏りが生じる
- 関係データは自己申告に依存することが多く、実際の相互作用とメンバーが報告する関係の間にギャップがある
- 静的な断面分析が多く、時系列でのネットワーク変化(動的ネットワーク分析)は技術的要求が高い
- SNAの指標(密度・中心性)の「望ましい水準」は文脈依存であり、単純な良し悪しの判断が難しい
⚠ よくある落とし穴
- ネットワーク図を作成して終わり、解釈がない報告 — 美しい可視化図は出力ではなく出発点。密度・中心性の変化が評価クエスチョンとどう関係するかを必ず解釈する
- 未回答者の関係を関係なしとして処理しない。欠損がどのノードや関係に集中したかを確認し、境界と収集範囲を示す。回答率の一律閾値だけで全体構造の信頼性を決めない。
- ネットワークの「密度が高い=良い」という単純化 — 緊密なクラスター内に情報が閉じ込められる「閉鎖性の罠」があり、弱い紐帯が外部との情報流通に重要な場合もある
適用条件と根拠
- 関係の構造を測る方法なので、関係の定義と分析範囲が指標の意味を決めます。 [1]
四つの団体の紹介関係を見る
説明用の仮想例です。4団体の間で、期間中に相互の紹介関係があれば無向の線1本とする仮想例です。
| 項目 | 仮想値 |
|---|---|
| 確認できた関係 | A-B、B-C、C-D の3本 |
| 可能な関係数 | 4×3÷2=6本 |
| 密度 | 3÷6=0.5 |
この例から判断できること
密度0.5は定義した4団体内の結果です。関係が多ければ必ず支援の質が高いわけではなく、紹介の適切さやつながっていない理由を確認します。
判断で間違えやすいこと
未回答団体を孤立していると判定する
見直し方: 未観測の関係と関係なしを区別する
理由: 欠測で線が見えないだけかもしれないためです。
紹介・資金・情報共有を同じ線で足す
見直し方: 関係の種類を分けて記録する
理由: 異なる機能を同じ密度に混ぜると解釈できないためです。
参照資料と確認箇所
- Social Network AnalysisOlivier Serrat/Asian Development Bank · 2009
- 参照箇所
- Social Network Analysis
- 本文との対応
- 関係の構造を測る方法なので、関係の定義と分析範囲が指標の意味を決めます。
このページの引用情報
評価コンパス編集.「社会ネットワーク分析」. 評価コンパス, 2026-09-13更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/methods/social-network-analysis/
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更新履歴
- — 定義と適用条件の出典を確認し、仮想事例、判断理由、全欄の記入例を追加。未確認の歴史・普及に関する断定を整理。 既存の手順・留意点も点検し、固定的な人数・閾値や制度の一般化を調整。

